子育てをしていると、生活のすべてが子ども中心となり、親自身の個性はないがしろにされがちです。また、社会の規範上、親が個性を重要視することは、好ましくないとする風潮すらあります。
しかし親が自分の個性を押し殺して、自己犠牲的な子育てを行っていると、子どもにも良くない影響を与えることがあります。親自身が個性を大事にすることで、子どもがのびのびと育つ土壌が整うこともあるのです。
この記事では、子育てを行ううえで軽視されがちな親の個性に着目し、それを活かした子育てのメリットなどを紹介します。
親は子育てで個性を失いがち
子育てにおいて、親の置かれた境遇は個性を失いやすい状況にあります。そのことを認識していないと、「良い親であろう」とした結果、子育てが自己犠牲的なものとなってしまい、親自身が苦しくなってしまうことも。
まずは子育てにおいて、親が個性を失いがちな理由や、個性を失った結果どのようなデメリットがあるのか考察してみましょう。
親が個性を失ってしまう理由とは?
親が個性を失ってしまう背景には、親の置かれた環境が大きく関係しています。いったいどのような環境が、親から個性を奪ってしまうのでしょうか。
親が個性を失ってしまう理由を探ってみましょう。
自分を見つめる時間が持てないから
子育てをしていると、自分の好きなことに没頭したり、自分自身を見つめたりする時間がなくなってしまうことがよくあります。
子育ては、意図的に時間を確保しようとしない限り休みはなく、日々子どもの世話やさまざまな作業に追われてしまう状況になりがちです。
そうしているうちに、自己探求や、自分のやりたいことへの取り組みができなくなり、自主的な態度、個性が失われてしまうことがあります。
社会の規範に合わせようとするから
子育てに関する社会的規範に無理に合わせようとした結果、親が個性を失ってしまうことがあります。
社会には「親はこうでなければならない」「子育てはこうあるべき」といった、規範のようなものが存在しています。
それは時には子育てのあり方を考えるヒントとなりますが、それに縛られて自分の気持ちや思いを押し殺すようになると、親の個性は失われていきます。
子どものことが最優先になるから
子育てでは、とにかく子どものことが最優先になり、親が自分の思いを押し殺して育児にあたる状況が起きやすいと言えます。
たしかに思い通りにいかないことが多い子育てにおいて、ある程度は子ども優先になるのは仕方のないことかもしれません。ただし子育ての主役は子どもだけでなく親でもあります。
子どもばかりを優先した結果、大人が自己犠牲的になってしまうことは、さまざまな弊害を生み出します。
親が個性を失うことはデメリットが多い
子どものことを一番に考えた結果、自分のことが後回しになり、親の個性が失われていくことはよくあることです。
しかし、子育てで親が自己犠牲的になり、個性を失っている状態が、さまざまな好ましくない状況を生むこともあります。
子育てで親が個性を失うことのデメリットについて見てみましょう。
ストレスや疲労がたまる
親が自分のことを後回しにしてばかりいると、ストレスや疲労がたまり、子育て自体へのエネルギーが失われてしまうことがあります。
子育てをストレスの原因と捉えるようになると、日々の仕事や子どもを疎ましく感じてしまうことも。子育ては大変なこともありますが、そのような心持ちになることは避けたいものです。
子どもにも悪影響がある
親が個性を失い自己犠牲的に子育てを行っていると、子どももそのような態度が正しいと考えるようになります。
親が自分の気持ちを押し殺して育児にあたっていると、子どもも自主的な行動や、自己表現にストップをかけてしまうことがあるのです。
子どもにとって親は人生で初めて出会うモデルとも言える存在。そのモデルが、自分の個性をひた隠しにして、半ば無理やり物事に取り組んでいるのは、良い傾向とは言えないでしょう。
親の個性を活かした子育てのメリット
子育てという、子ども中心になりがちな生活の中にあっても、親は個性を失う必要はないのです。
むしろ、親が個性を発揮し育児に向き合うことで、子どもがのびのびと育っていく環境を作り出すことができます。
ここでは親の個性を活かした子育てのメリットについて解説します。
子どもとの自然な関係が築ける
自分の気持ちを大切にし、個性を活かして生きるさまは、人間の自然な姿とも言えます。
親が自分を大切にしながら生きていると、子どもも自己表現を自由に行うようになり、結果的に親子で自然な関係が築けるようになるでしょう。
そのような関係の中でコミュニケーションを深めていくことが、親子の健全な相互理解につながります。
子どもに自己実現の大切さを示せる
子育ての重要な目的として、子どもに自己実現の力を身に付けさせることが挙げられます。自己実現を果たすためには、一人ひとりが自分の個性をいかんなく発揮し、自分の人生を切り開いていく態度が不可欠です。
親が個性を大事に生きるさまは、子どもにとって良いモデルとなります。親自身がのびのびと自己実現のために活動していれば、子どももその姿から自主的な行動力を学びとるようになるのです。
子どもの個性も伸ばすことができる
親が自分の個性を重要視していれば、子どもが自主的な行動を起こそうとしているとき、それを後押しし、サポートできるようになるでしょう。
子どもも自分の思いにブレーキをかけず、自己実現に向けてのびのびと行動できるようになります。自己肯定感が高まり、興味ある分野への探求心を伸ばしていけるようになるでしょう。
親が個性を大事に生きることは、子どもの自主的な態度を養い、それを育んでいく豊かな環境も生み出すのです。
親の個性を大切にするコーチング手法
このように子育てでは、親自身が自分の個性を大事にする姿勢が求められます。しかし日々の生活に忙殺されているうちに、自分の思いに向き合えなくなることもあるでしょう。
そのような際に提案したいのが「親へのコーチング」です。コーチングには、親が自分の気持ちを見つめられるようになるヒントが、多く含まれています。
コーチングは親の中に答えを求める
「親へのコーチング」は、いつも答えを親自身の中に求めます。
子育ては多くの場合、子どもの行動や周囲の協力体制など、他人の行為を軸に考えがちです。しかしそれでは親は周囲に振り回されてばかりで、自分の思いを重視できなくなります。
その結果、思うように動いてくれない子どもや他人にイライラして、子育てがつらくなってしまうことがあります。
その点「親へのコーチング」は、親自身の思い、親自身のありたい姿を重要視し、そこへいたるための過程や、負の感情への向き合い方も、親自身が見つけ出すことを促します。
そうすることで親は「自分がどのような親になりたいのか」、「どのような子育てを行いたいのか」、「何が自分にストップをかけていたのか」といったことを自覚できるようになるでしょう。
子育てを自分ごとだと再認識できる
コーチング的手法で物事を考えられるようになれば、親は子育てを「自分ごと」だと再認識できるようになるでしょう。
子どもや周囲に振り回されて個性を失ってしまうのではなく、むしろ主体的に子育てへ向き合えるようになるかもしれません。
そのような態度が養われれば、子どもも親から自主的に生きる姿勢を学べるようになるはずです。「親へのコーチング」は、親自身の考え方はもちろん、結果的に子どもにも良い影響を与えるものだと言えます。
また、親へのコーチが増えることで、子育てのあり方が変わり、子どもが自主性を育む環境が整っていくことも期待されます。
親も自分の個性を大事にしてのびのびと子育てに臨もう
本記事では、子育てにおける親の個性に着目し、親が個性を大切にしながら子育てにあたることのメリットなどを解説してきました。
子育てにおいて親の個性は重要視されにくく、時に抑えるべきものと捉えられることすらあります。もちろんそれが子どもの危険や、周囲との調和に影響を与えるものであれば、制御すべき場面もあるでしょう。
しかし、親が生きる姿勢として自分の個性を重要視していれば、子どももそれをモデルとし、自分の興味や能力を伸ばしていけるようになるはずです。「親へのコーチング」はそんな状況を生み出す大きなきっかけとなるのではないでしょうか。
子育てでは重要視されにくい親の個性ですが、子どものためにももう一度、見つめなおす必要があるかもしれません。