発達障害における視覚支援とは?評価の仕方、視覚支援の用い方を解説

発達障害のお子さんに「視覚支援」が有効というのは聞いたことがある人も多いですよね。
しかし具体的に視覚支援とはなにかと言われると、よくわからない人が多いのではないでしょうか。
一言に視覚支援と言っても幅広く、支援方法は多岐にわたります。
この記事では、視覚支援の例や幼少期における視覚支援をするための評価の仕方や、視覚支援をするときにまずなにから始めたらいいのかを解説します。

視覚支援とは

視覚支援とはどのようなもので、例としては何があるのでしょうか。
具体的に解説します。

言葉ではなく目で見てわかるものを提示する

発達障害を持つお子さんは、「視覚優位」と言われ、耳で聞く情報より目で見て確認できる情報の方が理解しやすい特徴を持つ子が多いと言われています
もちろん、人によっては視覚より聴覚の情報の方が理解しやすいお子さんもいます。
「視覚優位」というのは、視力とは異なるため、視力がいい、悪いは特に関係ありません。

視覚優位の特性を持つお子さんには、学童期であれば先生の指示は口頭で伝えるだけではなく黒板に書いたり、指示を書いた紙を渡した方が理解しやすいです。
また、一日の流れややることを口頭で伝えるだけではなく、黒板に書く、写真で見せるなどの支援をすると安心感を持った状態で日々の生活を送れます。

日常におけるルールも、口で何回も言うより良い例、悪い例を写真や絵などで見せた方が伝わりやすいこともあります。
私たちの中にも、歌の歌詞を聞いただけで覚えられる人もいれば、歌詞を実際に字で確認しないと何度聞いても覚えられないという人もいますよね。
実際に字で確認すると覚えられる人は聴覚よりも視覚優位の可能性があります。

一般的に「発達障害のお子さんにとってわかりやすい支援は、全てのお子さんにとって分かりやすい支援」と言われています。
そのため、視覚支援はぜひ普通学級や保育園、幼稚園の先生にも使ってほしい支援方法です。

視覚支援の例

一番有名な視覚支援は、スケジュールを示すというものです。
発達障害の中でも特に自閉症のお子さんは突然の予定変更や、これから何をするのかわからないと不安という特徴を持ちます。
予定が変更になったとき、私たちだったら「今日の予定が無くなったってことは別のことをするんだな」など予測できます。

しかし自閉症のお子さんは、「想像力の欠如」が特性であり、予定がなくなるとその先に何があるのか全く想像できず、不安に感じてしまいます。
そのため、自閉症のお子さんが安心して生活を送るために、その日の予定を文字で書いたり、写真や絵で示したりする視覚支援が有効です。

発達障害を持つお子さんの中には、声のボリュームが大きくなってしまう子もいます。
その際には、声のボリュームを1~5まで描いた絵を視覚的に提示し、「2の声にしよう」「5の声は危ない時だけに出す声だよ」など伝えると理解しやすいです。
また、時間というのは目に見えませんよね。
そのため好きなことや遊びなどを「あと15分でおしまいにしようね」と伝えてもなかなか切り替えられない、終わりにできないお子さんも多くいます。

その際は、時間を視覚的に確認できるようタイマーや砂時計を利用したり、タイムタイマーと呼ばれる、目で時間が減っていくのを確認できるものを使うのがおすすめです。
大切なのは、タイマーのスイッチをお子さんに押してもらうこと。
支援者が押してしまうと結局「やらされた」という思いが残ってしまうため、本人が納得した上で本人が自分の意志でタイマーのスイッチを押すことが肝心です。

日常でもトイレでの男女のマークや、駅での路線の色分けなど視覚支援は多く使われています。
発達障害を持つお子さんには、このような視覚支援を日常で取り入れることで安心感を持って生活することができます。

視覚支援の方法

視覚支援を用いるときに、実際どのように始めたらいいのでしょうか。

  • 評価
  • 初めは好きなものから

2つのポイントについて解説します。

評価

まずその子にとって一番理解しやすい視覚情報はなにか評価する必要があります。
実物じゃないとわからないのか、写真なのか、絵なのか、文字と絵なのか、文字だけでわかるのか、ひとりひとりの理解度により用いる視覚支援は変わってきます。
理解しやすい順に、

  • 実物
  • 写真
  • 絵(写真)+文字
  • 文字

となります。

実物を提示しなくてはわからないレベルの理解度だと、1日のスケジュールを示すのはまだ理解するのが難しいです。
そこまで長い見通しを持てるレベルではないからです。
そのため、スケジュールなどを示す視覚支援が使えるのは実物と写真のマッチングが出来てからです。

実物と写真のマッチングができているかどうかは、実際のもの(おもちゃやお菓子などお子さんの好きなもの)を写真に撮ってみて、ものを写真と同じ場所におけるかどうか評価します。
同様に、実物と絵が一致しているか、実物と文字が一致しているか、そもそも文字が読めるかなどを評価し、その子が今どの段階で、どの支援が一番理解しやすいか評価する必要があります。

保護者が適切に評価するのが難しい場合は、療育で作業療法士や言語聴覚士などのプロに頼むのがオススメです。
療育スタッフに評価してもらった結果をもとに、家族や支援者が視覚支援につなげましょう。

初めは好きなものから

視覚支援を用いるときに、いきなりやってほしいことやルール、指示から始めようとするひとは多くいます。
しかしこれは視覚支援を用いる上で、決してやってはいけません。
いきなり指示されると子どもにとって視覚支援が「嫌なもの」になってしまうからです。
まず用いるときは、好きなものから始めましょう。

例えば、写真を視覚支援として用いる段階の子であれば、その子の好きなおもちゃやお菓子の写真を撮っておきます。
そのおもちゃやお菓子の写真を保護者や支援者に渡したら、おもちゃやお菓子を実際にもらえた、という経験を積みます。
すると視覚支援の写真や絵=良いものという認識をお子さんが持ちます。

それにより視覚支援が「嫌なもの」ではなくなり、受け入れやすくなるのです。
もし再びルールの提示や指示に使ってお子さんが嫌がるようになったら、再び好きなもののときだけに使うようにしましょう。
せっかくお子さんにとってわかりやすく支援として使える方法が嫌なものになってしまっては勿体ない上に意味がありません。

この好きなものから始め、指示やルールとして使うのはあとからという順番は決して間違えないよう注意が必要です。

まとめ

視覚情報を理解しやすい特徴を持つ発達障害のお子さんには、ぜひ積極的に使ってほしい支援方法です。
また、視覚支援は街中のルールや標識、駅で路線ごとに色を変える、トイレは男女で色を変えるなど一目で見てわかるように、私たちの身の回りでも多く使われています。
つまり、視覚支援は発達障害を持つお子さんだけではなくすべてのお子さんにとってわかりやすい支援方法と言えます。

そのため、保育園や幼稚園、学校でもなるべく使ってほしい支援方法です。
また、初めに視覚支援を用いるときには指示やルールから始めるのではなく、必ずお子さんの好きなものから始めましょう。
好きなものから始めることで、視覚支援自体に抵抗がなく受け入れることができるからです。

適切に視覚支援を用いり、発達障害を持つお子さんが安心して生活を送れるよう支援することが大切です。