子どもの眼球運動の役割は?苦手だと出る症状や家でもできるビジョントレーニングを紹介

目を動かすときの運動である眼球運動。
眼球運動は、日常生活においてどう関わっているのでしょうか。
眼球運動は子どもにとって学習にも大きく関わっている大切な機能です。
この記事では、眼球運動の役割や、眼球運動が苦手な子に出る症状について解説します。
また、家や学校でもできるビジョントレーニングも紹介するので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

眼球運動とは

眼球運動とは何なのでしょうか。
簡単に言うと「目で見る力」のことです。
眼球運動には3種類あります。

  • サッカード
  • 輻輳(ふくそう)
  • 追従、追視

それぞれについて解説します。

サッカード

サッカードとは視線をひとつのものからひとつのものへパッと移すときの目の運動をいいます。
これは、学校に入った時にノートと黒板を見比べるときに使う眼球運動です。
また、教科書を読んでいて次の行へ視線を移すときにもこのサッカードを使います。
サッカードが苦手な子は、ノートを書き写すのが大変だったり、見比べるときに他の子よりも目が疲れやすかったりします。

そのため、ノートをとらなくてもいいようにプリントを配る、誰かのノートをコピーさせてもらうなどの対策や支援が必要となります。

輻輳(ふくそう)

輻輳とは、より目をするときの目の動きをいいます。
近くのものをみるときは、この輻輳とピント調節を目が行うことにより見えています。
そのため、輻輳が苦手な子は近くのものを見るときにピントが合うまでに時間がかかったり、目が疲れやすかったりします。

また、人との距離感を図るのが難しかったり、体育でボールをキャッチするときに上手く目で捉えられず、ボールをとれなかったりします。
他にも本・パソコン・スマホなどを見ているとすぐに疲れる、近くの文字が2重に見える、教科書を読んでいるところを見失う、集中力が続かないなどの状態になります。

教室で教科書を読むのが苦手だったり、音読が苦手だったりする子はこの輻輳に問題があるかもしれません。
教科書を読む際は指でたどったり、読む場所だけがわかるように1行だけ見えるようにくりぬいたシートを当てながら読んだりすると見やすくなるためおすすめです。

また、集中力が続かない理由は決してふざけているわけではなく他の子より疲れやすいという特性を理解することが大切です。
教科書をずっと見ていて疲れるようなら少し目を休め、体操をする時間などを授業中に取り入れてもいいかもしれません。
輻輳が苦手な子だけではなく、他の子もリフレッシュすることで集中力が高まります。

追従、追視

目で物を追うときに使う力です。
例えば、教科書を読むときに文字を辿るのは追従や追視と言われる運動をしています。
また、動いているものを目で追うのも追視です。
飛んでいる虫を捕まえたり、ダンスで先生の動きを見て真似をするときにも追視を使います。

追視が苦手なお子さんは上手く動いているものをつかむことが出来なかったり、本やマンガを読むのが苦手だったりします。
また、他のお子さんと比べ目が疲れやすいという特徴を持ちます。

眼球運動が苦手な子に出る症状

眼球運動が苦手な子にはさまざまな症状が出ます。
授業中に板書をノートに書きとることが苦手、模様や記号を写し描くことが苦手、本を読むとき文字や行を読み飛ばしてしまう、定規の目盛りがうまく読めない、漢字がなかなか覚えられない、計算の筆算で間違うことが多いなどです。

勉強が苦手なのではなく、ひょっとするとそれは眼球運動の苦手さからくるものかもしれません。

眼球運動は改善できる!ビジョントレーニング方法を紹介

眼球運動は、目の周りの筋肉によって行われます。
つまり、筋トレと同じように鍛えることで徐々に上手になってくるのです。
眼球運動を上手にするためのトレーニングを、ビジョントレーニングと言います。
家庭や学校でできるビジョントレーニングをいくつか紹介します。

ポイントとして、ビジョントレーニングは目の筋トレのようなものなので、「1日やったから上手になる」というものではありません。
毎日少しでもいいからこつこつやっていくのが大切です。

また、お子さんによってはビジョントレーニングに対して「難しい」と拒否することがあるかもしれません。
ビジョントレーニングは、お子さん本人が楽しく取り組めることが大切です。
そのため、ゲーム感覚でまずは取り入れることをお勧めします。

家や学校でできるビジョントレーニング

  • 視線移し
  • 迷路
  • 点つなぎ
  • ビー玉キャッチ
  • 風船バドミントン

について紹介します。

視線移し

親や支援者が両手それぞれにお子さんの好きなものを持ちます。
例えば右手にチョコレート、左手におせんべいだったとします。
親や支援者は両手を上下や左右に広げ(右あげて、左下げて、という旗揚げゲームのように)お子さんに「チョコレート見て、次おせんべい見て」などの指示を出します。

お子さんは右や左にパッと視線を移そうとします。
これはサッカードの練習になります。
大事なのはお子さんが見て楽しいものを視線移しの目的物として設定することです。

迷路

市販されている迷路や、親や支援者が考えた迷路でも何でも良いです。
スタートからゴールまで目で追うという、追視の練習になります。
また、視野が狭いとスタートからゴールまでの道すじを考えることができないので、視野を広げる練習にもなります。

点つなぎ

1~30まで、など数字を順番につないでいきます。
ビジョントレーニングの本や、市販されているワークなどに載っているもので大丈夫です。
お子さんは、次の数字を探すためにサッカードをします。
また、数字と数字を繋ぐときは追視の練習になります。

ビー玉キャッチ

お子さんと向かい合った状態で机に座ります。
お子さんにビー玉をキャッチするためのコップを持ってもらいます。
親や支援者は反対方向からゆっくりビー玉を転がし、落ちる前にお子さんにコップでキャッチしてもらいます。
これは追視、輻輳の練習になります。

また、目で見て手でキャッチするという目と手の協調の練習になります。
コップでキャッチするのが難しいお子さんは、初めは大きめのボウルや風呂の桶から始めるのもおすすめです。
慣れてきたらコップに移行しましょう。

風船バドミントン

筋肉は早く動かすよりもゆっくり動かすときに一番働くと言われています。
私たちも階段を上るとき、一気に駆け上がるよりもゆっくり上った方が疲れますよね。
それと同じで、目もゆっくり動かすときに一番筋肉を使います。
そのため、ゆっくり落ちてくる風船を目で追うのはとてもいい練習になります。

お子さんと支援者は向かい合い、バドミントンラケットを持ちます。
風船をバドミントンの羽の代わりに打ち合うだけです。
ゆっくり落ちてくる風船を目で追うという追視の練習になります。
また、目で見て手で打つという目と手の協調運動の練習にもなります。

バドミントンのラケットでは長くて難しいという人は、お子さん用の短いバドミントンラケットを使うのがおすすめです。
うちわや卓球のラケットも風船との距離が短くなるので打ちやすいです。
また、初めは手で打つところから始め、徐々に道具を使って打つ練習に移行すると、お子さんが難しさを感じることなく楽しく取り組めるのでぜひやってみてください。

まとめ

眼球運動は物を目で追ったり、近くと遠くを見比べたり、近くのものを見るときに使う大切な機能です。
眼球運動が苦手な子は、授業中教科書を読むのが苦手だったり、板書をとるのが難しかったり、ひといちばい疲れやすかったりします。

まずはその子にとって何が大変か見極め、周りは対応することが大切です。
また、眼球運動はビジョントレーニングというトレーニングを行うことで、ある程度改善することができます。
毎日こつこつ楽しくやりながら、お子さんを支援していくことが大切です。