教育現場のデジタル化で教員の負担を減らそう

みなさん、こんにちは。

今回は、オーストラリアの教育現場と比較した日本の「教育現場のデジタル化」の必要性についてお話します。

教育現場のデジタル化が進むことで学校の先生の負担が減ることは確実です。
この記事を通してそのようにお考えになる人が増えてもらえたらと思います。

日本の学校の先生は働きすぎ

日本の学校の先生は世界で最も働いています。

2018年のOECD(経済協力開発機構)の国際調査によると、日本の正採用の中学校教員の一週間の労働時間は平均で59.3時間で、これは世界中の国々の中でもダントツです。

しかし、59.3時間のうち、授業やその準備のための時間は27.4時間で、これは、全労働時間の46.2%でしかなく、授業のために費やす時間は世界で28位となっています

他の先進国と比べても全労働時間に対する授業にかける時間の割合は非常に低いです。イギリスやスウェーデンでは約60%、韓国とフランスでは70%、そしてアメリカでは80%程度となっていることからも、日本の学校の先生の授業以外の業務の負担は極めて大きいということがわかります

会議、事務作業、会計業務、部活動、生徒指導…近年、教員のブラック労働環境がメディアでも取り沙汰され、問題視されています。

そして、「教員=ブラック」というイメージが定着してしまったからか、近年教員になりたいと考える若者の数が減っており、教員採用試験の倍率も年々下がっています。採用試験の競争倍率が下がるということは、つまり、教員の質が落ちていくということです。日本の未来を作り上げていくべき教育現場の質が落ち、負のスパイラルに陥るわけです。

このような状況を打破するためにも、教員の労働環境の改善は急務です。

そのためにも、教員の仕事のデジタル化を進めることで、この状況が少しでも改善されることを願うばかりです。

オーストラリアの学校システムのデジタル化について

オーストラリアの学校は教育現場のデジタル化が進んでいます。

オーストラリアの学校には、学校用のアプリが存在し、教員・生徒・保護者がこのアプリをダウンロードして日常的に活用します。学校によってアプリが異なるので一概には言えませんが、私が知っている限りだと、アプリで下記のことができます。

  • 行事等の生徒・保護者への連絡
  • お金の支払いができる
  • 欠席等の連絡・担任の先生とのやりとり
  • 成績管理

以前、公立高校の教員をやっていた身からすると、目から鱗でしたし、非常に羨ましいシステムです。それぞれについて簡単に、日本での現状と比較しながら説明します。

行事等の連絡

日本でも、新型コロナがきっかけで状況が変わってきているかと思いますが、オーストラリアではコロナ以前から、保護者や生徒への連絡事項は全てアプリを通じて行われてきました。

日本では「紙媒体」のプリントが主流ではないでしょうか?先生が、連絡事項を印刷し、子どもから保護者へ手渡しするという流れが一般的だったと思います。そして、お子さんの中には、そのようなプリントを保護者に渡すことを忘れてしまったり、プリントを紛失してしまい、保護者は、学校での状況を何も把握されていないということも、日本の教育現場では「あるある」です。

しかし、このような連絡をアプリを通じて行うことで、保護者に連絡事項を周知徹底させることが可能になりますし、先生方が、プリントを印刷する時間が省けます。

一度の印刷はそこまで時間がかかるものではありませんが、これが一年で何度も何度も行われると、それなりの時間を取られるのです。

お金の支払いができる

アプリを通じて保護者は、授業料、子どもの昼食代、テキスト代の支払いなどができます。

これは非常に画期的なことだと思われます。日本の教育現場は、まだアナログで、先生方が、お子さんの給食費を回収したり、高校では、子どもたちにお金を持参させて、教科書販売に向かわせたりします。

「お金」に絡む仕事は、精神的に負担です。指定した金額を生徒がきちんと持ってきているかを確認したり、生徒がお金を紛失しないか心配をしたり、回収したお金を管理したり…

このような業務から解放されたら、どれだけいいだろうと何度も思ったことがありますが、アプリを導入することで、このような「お金」に関する業務から先生方を解放し、精神的な負担を減らすことにもつながるのです。

欠席等の連絡・担任の先生とのやりとり

教育困難校と呼ばれるような学校で担任を受け持ったことがあります。このような学校に入学する生徒は、学校が嫌いな子が多いです。そしてアルバイトや友達を遊ぶことに明け暮れて、夜型の生活になっていることもよくあります。

そのため、朝のHRでクラスの生徒が10人近くいないということはよくあることなのです。

朝のHRが終わると、職員室に戻り、学校に来ていない生徒の自宅や、保護者の携帯電話に電話をかけます。

職員室には電話の数が限られており、かつ他のクラスも似たような状況なので、電話には各クラスの担任の列が出来上がってしまうのです。1時間目に授業が入っている場合は、電話をかける時間もありません。自分の空いている時間帯を見つけて、電話連絡する必要があります。

ご存知のように、高校は義務教育ではありません。そのため、各授業で、欠席しても良い回数が決まっており、その回数を超えてしまうと、単位を習得することができず、進級できず、場合によっては退学になるのです。

義務教育ではないのだから、生徒や保護者の自己責任ではないかと思われる方もいるかもしれませんが、そういうわけにはいかないのが現実です。

教員だった頃に先輩に口酸っぱく、保護者への連絡は欠かさないように言われました。もし裁判になり、「担任の先生は何もしてくれなかった。」と訴えられてしまった場合、教員が敗訴することになるからという理由からです。よって、生徒のためというよりは自分を守るために、このような連絡はやらないといけないのです。

言うまでもなく非常に負担です。しかし、アプリを活用して、保護者や生徒本人にメッセージを送れるようになることで、このような負担はかなり減ると考えられます。

成績管理

日本では、学期末になると「通知表」を印刷し、それを終業式・修了式に配布します。通知表を作成する上で印刷業務、そして手書きでのコメント等様々な業務があります。

特に、生徒一人ひとりに対する担任の先生からのコメントは非常に負担です。確かに手書きで書かれていた方が、気持ちが籠っているように感じられるため良いと思われるかもしれません。しかし、想像してみてください。成績表が印刷されて、終業式まであと2,3日しかないところで、担任の先生が40人近くの通知表にコメントを手書きで書くのです。学校によっては3学期制の学校も多いので、この作業を年に3回行うことになります。あなたには出来ますか?

日本の学校現場のデジタル化を進めよう

いかがでしたか?世界の教育現場はかなり進んでいます。

教育現場のデジタル化によって良い点も悪い点もありますが、まずは試してみることが大切だと思います。

元教員だった立場からすると、このようなアプリを活用することで、業務や精神的負担が減ることはありがたいことです。

そして、その分のエネルギーや時間を本来かけるべきところ、授業に還元できるのが理想でしょう。

日本の先生方の労働環境がより良いものになり、人気のある職業へと変わり、質の高い教育を子どもたちに提供できる場に変わってもらいたいと切に願います。

参考:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/07/post-12554.php