現在日本の不登校児童の数は20万人近い数となっており、年々増加傾向をたどっています。また不登校は、若者のひきこもりの最大の要因とされ、国が抱える社会問題の一つとなっています。
しかし、不登校の理由や背景は様々で、不登校の児童を特別視したり、不登校を問題行動のように論じるのは正しくありません。環境や状況次第で、子どもたちが不登校になってしまうことは、どの家庭にも起こりえることです。
そんな不登校児童や家族にとって、手を差し伸べるのがフリースクールです。
フリースクールは不登校の子どものための「居場所」として、社会において大変意義のある場となっています。
一方で、フリースクールの現状について見てみると、まだまだ解決すべき課題が多く挙げられます。
この記事ではそんなフリースクールの特徴と、これから解決していくべき課題について解説します。フリースクールに関心のある方や、フリースクールの設立、運営に興味を感じている方には、必ず知っておいてほしい事実です。ぜひご覧ください。
フリースクールとは
ここではフリースクールの様子や特徴について解説します。フリースクールの現場の雰囲気を捉えることは、課題について考える上でも大変重要となります。
フリースクールの特徴
フリースクールは現在、日本で500か所近く運営され、4000人以上の小中学生が通っています。通うのは主に不登校の子どもたちですが、学習障害や発達障害の人を支援しているスクールも存在します。
運営しているのは主にNPO法人や個人の民間ですが、文部科学省も不登校対策として重要な機関であると、その意義を認めています。通う年齢もフリースクールによっては20歳近い人まで迎えており、良い在り方が常に求められる機関となっています。
フリースクールは通常の学校と違い、学習指導要領などの指導内容の縛りがありません。そのためスクールによって趣旨や目指すものは様々で、活動内容も多岐にわたります。
フリースクールに通う子どもたちには、「決められたカリキュラムや進度」に沿って学ぶことを苦手とする場合も多くあります。それをふまえて、それぞれのスクールが、独自の方向性で子どもたちに合わせた活動を行っています。
一方で、悩み相談やカウンセリングなど、精神面のサポートにも重きを置いているのが共通点として挙げられます。
フリースクールでの活動
フリースクールの活動の内容は様々です。
登校の時間も定めず、子どもたち自身が興味のある内容を決定し学んでいくスタイルもあれば、学校へ復帰することを目指し、学習理解度のカバーや生活リズムをつかむ支援を行う場合もあります。
通常の学校のように、同い年の児童と学ぶのではなく、異なる年齢の子どもたちと一緒に活動しながら、他者との交流を学んでいく場合も多くあります。寮で共同生活を送るようなフリースクールもあります。
そのほか、ひきこもりがちな子どもの自宅にスタッフが訪問するタイプのフリースクールもあるなど、その内容は様々です。
大切なのは、子どもたちの性格や環境に寄り添い、一番良い学びのスタイルを探ることです。
フリースクールのメリット
フリースクールに通うことで得られるメリットについて解説します。
このことを大人がしっかり理解することが、フリースクールを取り巻く環境を良くしていくためには不可欠です。
国も認めるフリースクールの重要性
フリースクールは国の教育機関ではありません。運営は主に民間により支えられています。ただ、国もフリースクールの重要性について論じています。
2018年に施工された「教育機会確保法」でも、不登校児童への対策として、通常の学校とフリースクールの連携の重要性が記されており、不登校の児童が社会的自立を果たすのにおいて、大切な役割を担う機関であると認められています。
フリースクールが「居場所」になる
不登校になった子どもにとって、「学校」は安心していられる居場所ではありません。その要因はいくつも挙げられるでしょうが、大切なのは原因をなくすことばかりでなく、解決策を作ることです。
その点で、フリースクールは子どもたちにとって、大事な居場所になります。自分がありのまま受け入れてもらえる場所があることは、子供たちの成長の大前提となります。
フリースクールでは同じ境遇の人といられる
不登校児童は、「本当は学校に行くべきなのに行けていない自分」を責めてしまう場合が多くあります。しかしこの思考に陥ると、健やかな精神状態が保てず、何も好転していきません。
また一度不登校になると、学校に再度登校した際の周囲の目線が気になるという子どもたちも多くいます。
その点でフリースクールははじめから自分と同じ境遇の仲間が多いので、精神的に楽になりやすい状況にあります。
安心を得ることは、何を学ぶにしても、第一に大切なことです。フリースクールの環境は不登校の子どもたちが安心を得やすいものとなっています。
フリースクールでは個別指導や少人数グループで学べる
不登校児童が通常の学校になじめない要因として多人数クラスの弊害も考えられます。
多人数が同じことを学ぶと「比較」が生じます。他の人にはできて、自分にはできない。だから自分はダメなんだと、自己嫌悪にもつながります。
しかし本来子どもに限らず、人はみんな個性があります。
それぞれの良い所を活かし、お互いが認め合い、思いやり、切磋琢磨していく関係が望ましいのです。勝敗や、差別が生まれやすい多人数クラスで、心を病んでしまう子どもが生まれるのは何も不思議なことではありません。
それに対し、フリースクールの多くが個別指導や少人数グループなど、比較や差別が生じにくい体制での学びを採用しています。のびのびと学べる環境でこそ、子どもたちの成長と社会的自立は果たされていきます。
フリースクールの現状と課題
多くの意義とメリットを備えたフリースクールですが、そこへ通う不登校児童は全体の2%と、まだ大変少ないのが実情です。そこにはまだ課題が多く存在し、改善の余地があります。
その中身を理解し、より良いフリースクールの在り方を考えていくことが重要です。
子どもを通わせる金銭面の負担
現状フリースクールに子供を通わせるには、保護者が金銭的負担を負う必要があります。
その金額はスクールごとの幅はありますが、月平均3万3000円、入学金は平均5万3千円となっています。
フリースクールを設立、運営する負担
フリースクールの意義は国も認めていますが、公的な支援はありません。
通常の学校は公的資金が投入されている点から、これを疑問視する声もありますが、その是非については多くの議論を呼んでいます。
いずれにしても現状のフリースクールの設立および運営は、経営者の経営努力によって成り立っています。そこには職員の待遇の低さや、寄付金に頼るなどの非安定性などが生じているのも事実です。
公的支援による解決を待つばかりでは足りません。フリースクールの設立、運営にはそれらに対する現実的なアイディアと、周囲の強力を得ることが重要となっています。
フリースクールへ通うことへの心理的な問題
そもそもフリースクールは公的に「学校」として認められていません。
小中学生は実際は通っていなくても「籍」は通常の学校にある状態で、出席扱いになるかどうかも学校側に決定権があります。
そのような状況からも、フリースクールには「普通の学校にいけない子が通う学校」というマイナスイメージが依然としてあります。そこへ通うことは「不登校児として認めたことになる」と考える子どもや親もいるようです。
しかし、不登校は環境や境遇次第で、誰でもなりえるものです。それは決して「弱いから」や「駄目な子」だからなるのでも無いし、「親の育て方が悪かったから」とも限りません。
これらの課題をふまえて、まだまだフリースクールは制度面、心理面共に、改善していくべき状況にあると言えます。
フリースクールについて多くの人が知ることが大切
本記事ではフリースクールの特徴や、現状と課題について解説してきました。
どんな子でも、どんな親のもとにも、不登校は生じ得るものです。そしてその子どもたちの居場所として、フリースクールはより良い環境への改善が必要です。
そのためにはフリースクールを運営する人のみならず、多くの人が現状と課題を知る必要があります。
それをふまえて、フリースクールの内容や制度がより改善し、子どもたちがのびのび育っていける、重要な立ち位置を確立してくれればと願います。