ひといちばい敏感な子という意味を持つHSC(Highly Sensitive Child)とはどのような特徴を持つお子さんなのでしょうか。
また、発達障害との違いや、HSCに対する親や支援者の関わり方を紹介します。
HSCとは
HSCとは、ひといちばい敏感な子という意味を持つ、アメリカの心理学者であるエレイン・アーロン博士(以下アーロン博士)が提唱した言葉です。
- HSCの特徴
- HSC23個のチェックポイント
- HSCと発達障害の違い
3つについて解説します。
HSCの特徴
HSCは、ひといちばい敏感な大人を指す言葉であるHSPの子どもバージョンです。
5人に1人という割合でひといちばい敏感なお子さんがいると言われています。
HSCは共感力があり、直感が鋭いと言われています。
そのため、人が泣いていると一緒に泣く、保育園入園の手続きをしてからよく泣くようになったなどの行動が出る場合があります。
また、想像力豊かであり、植物や赤ちゃん、認知症の高齢者などの気持ちをよく理解できるお子さんもいます。
慎重なところがあり、他の子がどんどん向かっていく滑り台やブランコなどの遊具も、いきなり取り組むことはなく、大丈夫という安心感を持ってから取り組みます。
大きな音や視覚情報に対しては混乱しやすく、ざわざわした場所や大勢人がいる場所は苦手です。
そのため大勢で遊ぶのは苦手だったり、みんなの前で発表をする際は緊張や動揺したりします。
限られた時間の中でいろいろなことをしなくてはならない状況に置かれると、混乱します。
痛みや刺激にも敏感で、薬にも反応を示しやすいと言われています。
また、免疫システムも敏感なため、アトピーや喘息などのアレルギー反応が出やすい子もいると言われています。
全身でいろいろな情報を敏感に感じ取っているのがHSCの特徴です。
HSC23個のチェックポイント
以下はアーロン博士が作った、23個のチェックリストです。
13個以上「はい」がつくとHSCです。
また、1個か2個しかつかなくてもその特徴が強い場合、HSCの可能性があると言われています
1.すぐにびっくりする
2.服の布地がちくちくしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
3.驚かされるのが苦手である
4.しつけは、強い罰よりも、優しい注意の方が効果がある
5.親の心を読む
6.年齢のわりに難しい言葉を使う
7.いつもと違うにおいに気付く
8.ユーモアのセンスがある
9.直観力に優れている
10.興奮したあとはなかなか寝付けない
11.大きな変化にうまく適応できない
12.たくさんのことを質問する
13.服が濡れたり、砂がついたりすると、着替えたがる
14.完璧主義である
15.誰かが辛い思いをしていることに気付く
16.静かに遊ぶのを好む
17.考えさせられる深い質問をする
18.痛みに敏感である
19.うるさい場所を嫌がる
20.細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気付く
21.石橋をたたいて亘
22.人前で発表するときは、知っている人だけの方がうまくいく
23.物事を深く考える
HSCと発達障害の違い
HSCの特徴と、発達障害における感覚過敏の特徴はよく似ています。
特に幼少期は見分けるのが難しいと言われています。
どちらなのか知りたい場合は、発達障害の診断ができる専門の小児科を受診する必要があります。
しかし大切なのは、その子がHSCなのか発達障害なのかと分類することではなく、いま目の前にいる子が何に困っていて、どう支援すればわかりやすく、できるようになるのかを見ることです。
大事なのは分類や症状に名前を付けることではありません。
親や支援者は子の状態を見て、その子に合った適切なかかわりをしていくことが大切なのです。
HSCに対する親や支援者の関わり方
ひといちばい敏感なHSCの子と関わる際に、親や支援者はどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。
- 叱るときは優しい口調で伝える
- 良い点に目を向け褒める
- スモールステップで経験を積む
3点について解説します。
叱るときは優しい口調で伝える
HSCは他の子よりもガミガミと叱られたり大きい声を出されたりすることに敏感に反応します。
ただガミガミ怒るだけでは恐怖心が残るだけであり、少し注意しただけでも「否定された、自分はダメな子なんだ」という思考になりがちです。
そのため「こうするといいよ」という伝え方をし、「ここはできていてすごいね」など肯定も付け加えるようにしましょう。
そうすることで、自己肯定感を下げることなく、伝えることができます。
良い点に目を向け褒める
HSCはひといちばい敏感なため、できなかったことや失敗したことに対して自信を無くしやすいです。
そのため、自己肯定感が下がりやすいと言われています。
親や支援者は、まずHSCの良い点に目を向け褒めることを心がけましょう。
今できている当たり前のことに目を向けるだけでいいのです。
例えば、食事中箸の持ち方や食べるのが遅いことが気になったとしても、「しっかり椅子に座って食べていて偉いね」など、その子が出来ている部分を見つけ伝えるのが大切です。
スモールステップで経験を積む
HSCは、新しい環境や新しい物事に取り組むときに、ひとより緊張したり慣れにくかったりします。
そのため、いきなり高いレベルのことを求め、失敗すると、もう二度とやりたくないとなってしまうことがあります。
まずは、スモールステップで「できた」という達成感を持つことが大切です。
達成感を持った子は、「次もやってみよう」とどんどん新たな挑戦に向かうことができます。
例えば料理をやりたがる子にはまずはお皿を運んでもらう、次に一緒にかき混ぜてみる、ひとりでかき混ぜてみると段階を踏んでいく必要があります。
また、運動でも高いところが怖い子にいきなり「滑り台を滑ろう」と誘っても難しいです。
まずは小さい段差をのぼる、次に滑り台を大人と一緒に滑ってみる、それができたらひとりでやってみる、と段階を踏みましょう。
一緒にやるのも怖いという段階のお子さんには、「お母さん(もしくは支援者)がやるから見ててね」などの声掛けをし、見本を見るだけから始めてもいいです。
また、失敗しても大丈夫という安心感を持ってもらうために、わざと親や支援者が失敗委する姿を見せてもいいですね。
「失敗しちゃったけどもう1回やり直せばいいよね」と伝え、たとえ失敗しても大丈夫という安心感を持つだけでも、だいぶ心の支えになります。
まとめ
HSCはひといちばい敏感であり、5人に1人という一定の割合でみられると言われています。
HSCと発達障害の違いは幼少期は特にわかりにくく、医師による専門的な診断が必要です。
しかし大切なのはHSCか発達障害なのか分類することではなく、その子自身をみることです。
目の前にいるお子さんが何が好きで、何が得意で、何に困り、どのように支援したらわかりやすく、どのように声掛けをしたらできるようになるのか、周りは理解し支援していくことが大切です。