HSP(Highly Sensitive Person)とは、ひといちばい敏感な性質を持つ人を表す言葉です。
HSPの子どもバージョンの言葉がHSC(Highly Sensitive Chid)であり、5人に1人の割合で敏感な性質を持った人がいると言われています。
HSPやHSCと言われる人たちは、他の人よりもすぐ泣いてしまうことがあります。
この記事では、HSPやHSCがすぐ泣いてしまうのはなぜなのか、その理由や、親や支援者はどう関わればいいのかを解説します。
HSPがすぐ泣いてしまう理由
HSPやHSCがすぐ泣いてしまう理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
- 感覚刺激の受け取り方が敏感である
- 物事を否定的にとらえやすい
- 完璧主義である
- 集団生活でストレスを感じやすい
4点について解説します。
感覚刺激の受け取り方が敏感である
HSPやHSCは感覚刺激の受け取り方が他の子と比べて敏感な場合があります。
他の人が不快に感じない音に対して異常に怖がったり(家電やトイレのジェットタオルの音など)、シャワーの水圧に痛がったり、身体を触られることに対して不快に感じたりします。
そのため、普段から常にストレスの多い状態であり、いっぱいいっぱいのことが多いです。
よって、少しの刺激で張りつめていた糸が切れるように爆発してしまい、泣く場合があります。
物事を否定的にとらえやすい
HSPやHSCは物事を否定的にとらえやすい傾向にあります。
そのため、親や支援者が怒ったつもりではなくても「怒られた」「自分はダメな人間だ」ととらえてしまう場合があります。
また、友達とのかかわりの中で友達から返事をしてもらえなかった、遊びにたまたま入れてもらえなかったことに対し「嫌われてるんだ」「何かしてしまったのかも」と否定的にとらえる傾向があります。
他の子だったら「聞こえなかっただけかもしれない」「人数的に入れないのかもしれない」と違うとらえ方ができることでも、自分のせいのように感じてしまい、それがストレスになり泣いてしまう場合があります。
完璧主義である
HSPやHSCは完璧主義である一面があります。
勝負事には勝たなきゃダメ、テストは100点じゃなきゃダメ、いい子じゃなきゃダメと普段から気持ちを張りつめて生活している場合が多いです。
そのため、自分の中で「これでいい」と思えるレベルが高く、そのレベルに達しなかった場合強いストレスを感じます。
完璧主義であるがゆえにひとよりも勝負事に負けたり失敗をしたりしたときにショックを受け、泣いてしまう場合があります。
集団生活でストレスを感じやすい
HSPやHSCは感覚刺激の受け取り方が敏感であることから、集団でざわざわしているのが苦手だったり、完璧主義である点から、大勢の前で失敗することが過度に苦手だったりするため、集団生活でストレスを感じやすいです。
中には集団行動するのが難しかったり、クラスみんなの前で発表することが難しい子もいます。
その際、「みんなと同じにできない」ことを責められたり、「みんなと同じことができない自分はダメだ」と思い込んだりして、ストレスを強く感じる場合があります。
保育園や幼稚園、学校は常に集団生活であるため常にストレスを感じ、いっぱいいっぱいになるため泣いてしまう場合があります。
HSPに対し親や支援者はどう関わるべきか
HSPやHSCに対し親や支援者はどう関われば良いのでしょうか。
- 感覚刺激の受け取りの方の特徴を知り、工夫する
- その子の今できている部分に注目する
- 結果ではなく過程に注目する
- 集団生活の苦手さを知り、その子に合った対応をする
4点について解説します。
感覚刺激の受け取り方の特徴を知り、工夫する
HSPやHSCは感覚刺激の受け取り方が敏感であり、他の子とは違う場合があります。
その子自身が不快に感じる刺激は、慣れさせようと思っても慣れるものではありません。
例えば、黒板を爪でひっかく音が苦手な人は多いですよね。
あの音は、何回も聞いていたら慣れるでしょうか?
きっと多くの人が慣れることはなく、ただストレスを感じるだけです。
それと同様に、HSPやHSCが不快と感じる感覚刺激は基本的に取り除いてあげることが大切です。
服の袖が濡れるのを嫌がる子には、すぐ着替えさせる、工作のときに指で塗るのりが苦手な子にはすぐ手を拭けるようにタオルを置く、スティックのりを使うなど個別の対応が必要です。
視覚刺激が多いと混乱する子は教室で前の方の席にすることや、掲示物を減らすことで刺激を減らすことができます。
このように、その子が不快と思う刺激は取り除くことが大切です。
その子の今できている部分に注目する
HSPやHSCは物事を否定的にとらえやすい特徴があるため、自分のできていない部分に目が行きがちです。
そのため、親や支援者はその子の今できている部分に注目し、認めてあげることが大切です。
できて当たり前と思うことでも、褒めましょう。
例えば食事中箸の持ち方や姿勢が気になったとしても、それに対し指摘はしません。
それよりも「しっかりと椅子に座ってご飯を食べて偉いね」と、今できている部分に注目し褒めるとHSPやHSCは自信が持てます。
結果ではなく過程に注目する
HSPやHSCは完璧主義であるため、物事の過程ではなく結果に注目する傾向があります。
また、親や支援者もつい結果ばかりに注目しがちです。
例えば「テストで〇〇点なんて偉いね!」「かけっこ早かったね」などの誉め言葉をかけた経験がある人は多いのではないでしょうか。
もちろん褒めるのはいいことですが、さらに過程にも注目すると、「頑張って良かった」と思え自信につながります。
例えば「勉強毎日頑張ってるもんね」「運動会の練習頑張っているもんね」といったように、結果だけではなくその出来事が起きた過程に注目し褒めたり言葉をかけることで、自己肯定感が高まります。
集団生活の苦手さを知り、その子に合った対応をする
HSPやHSCは集団生活が苦手な場合があります。
例えば音に対して敏感でありざわざわした場所や大きい音が鳴る場所が落ち着かない子は、大勢の子がいる教室や大きな音が鳴る運動会の練習などでストレスを感じやすいです。
その際に「音が嫌でも絶対に教室にいなきゃダメ」「運動会練習もその場にいなきゃダメ」といった対応をすると、その子にとってストレスが大きくなります。
「辛かったら教室(もしくは他の先生がいる保健室など)に戻っていいからね」「音が怖かったら先生に言おうね」など、保護者と先生の間でその子が困ったときの対応方法を共通認識として決めておくことが大切です。
そうすることでストレスが減り、安心して保育園や幼稚園、学校での生活を送ることができます。
まとめ
HSPやHSCは感覚刺激の受け取り方が敏感、物事を否定的にとらえやすい、完璧主義である、集団生活でストレスを感じやすいという特徴から、すぐ泣いてしまう場合があります。
普段から他の子よりも多大なストレスを感じているため、周りから見るとちょっとしたことでもすでに張りつめていた糸が切れた状態になることがあります。
HSPやHSCがなるべくストレスを感じず日常生活を安心して送るために、親や支援者は感覚刺激の受け取り方の特徴を理解し配慮する、その子の今できている部分に注目する、結果ではなく過程に注目する、集団生活の苦手さを知り、その子に合った対応をするといった関りが必要となります。
ストレスを感じやすいHSPやHSCが安心して生活を送るには、ストレスを感じる状況を出来るだけ少なくなるよう取り除いてあげる関わりが大切です。
ストレスを減らし、毎日安心して過ごす中で自分に自信が持てるよう、周りのサポートは必要不可欠です。