子育てにおいて親が直面する苦労はさまざまなものがありますが、子どもを叱ることについて悩んでいる親は少なくありません。つい感情的になり声を荒げてしまい、その叱り方に後悔する、という声が頻繁に聞かれます。
この記事では、子どもを叱ったあとに感じてしまう自己嫌悪について、親がどのように向き合えばよいか、コーチングの手法を手がかりに考えてみたいと思います。
子どもを叱った後に自己嫌悪を感じてしまう理由とは
まずは子どもを叱ったことで、親が自己嫌悪を感じてしまう理由について考察してみましょう。自分の感情を冷静に見つめることで、それをコントロールする方法が見えてくるかもしれません。
子育てでイライラするのは自然なこと
子育ての過程で、子どもの行為や言動に対してイライラしてしまうことは、おかしなことではありません。現に子育てに携わる親の悩みを紐解くと、「子どもにイライラする」という声は非常によく聞かれます。
育児に関するさまざまな悩み事や不安な気持ちが、言うことを聞かない子どもの姿を見て、怒りとして発露してしまうこともあるでしょう。
言い換えれば、イライラすること自体が問題なのではなく、そのイライラした気分をどう捉え、制御するかが問題になるということです。
子どもを感情的に叱って後悔する
では、自己嫌悪につながってしまう「叱り方」はどのようなものなのか。それは、自分でも怒りをコントロールできず、感情的に叱ってしまった場合ではないでしょうか。
「言わなくてもいいことまで言って子どもを怖がらせてしまった」「子どもが心を閉ざしてしまったらどうしよう」など、自分の叱り方に自信が持てず、後悔を感じる親が多いようです。
実際、怒りに任せて叱ってばかりいると、子どもは親の顔色ばかりをうかがうようになります。あるいは叱られることで萎縮してしまい、何が良くて何が悪いのかなど、冷静に考えられなくなってしまう恐れがあります。それでは健全な成長にはつながりません。
子育てへの「こうあるべき」が存在している
感情的に叱ってしまったことに対する自己嫌悪の背景には、「叱り方はこうでなければならない」「親のしつけはこうあるべきだ」という「こうあるべき」の考え方が存在します。
「理想の親はこうあるべき」なのに、自分はそのような振る舞いができていない。その結果、子どもにつらい思いをさせてしまった。そんな自分は親失格だ、などと罪悪感を抱いていることが多いように思います。
「叱り方」が決まっていない
また、「どのような言い回しで子どもを叱ればいいのか」「イライラを感じた際、どういう思いで子どもに接すればいいのか」が整理できていない親も多いです。
それが定まっていないと、イライラの感情が高まると思わず怒鳴ってしまったり、手が出てしまったりと、後悔につながる叱り方につながります。
叱り方、あるいは叱る場面については、普段から自分を振り返り考えていないかぎり、とっさに判断するのは難しいものです。
コーチングの手法で自己嫌悪に陥らない「叱り方」を考える
自己嫌悪につながるような叱り方を見直すために、親は自分の「叱ること」への考え方を、整理する必要があります。
ここではコーチングの手法をヒントに、怒りや叱り方に対してどのように親が向き合うべきか、考察してみましょう。
答えは親の中にある
コーチングの基本的な考え方は「答えはクライアントの中にある」というもの。外部から「答え」を押し付けるのではなく、クライアントが自分で「ありたい姿」を見出し、そこへいたるための過程もクライアント自身が発見します。
コーチはそれを引き出すために、クライアントの話を傾聴し、整理し、導く役割を担うのです。クライアントはコーチとのやり取りを通して、気付けていなかった自分の思いを可視化でき、負の感情への対処法も冷静に考えられるようになります。
子育てに置き換えていえば、親自身が「どのような子育てをしたいか」「『叱る』ことをどうとらえるか」「イライラする気持ちにどのように対処すべきか」等を考えることにつながります。
自分の「ありたい姿」に気付く
親は自分の子育てについて考える過程で、「本当はこういう親になりたい」という「ありたい姿」を発見できるでしょう。また、そんな「ありたい姿」を持っていながら、それが実践できないギャップに自己嫌悪を感じていることが自覚できると思います。
良い子育てがしたい。子どもがのびのび成長できるように促したい。しかし、つい感情的に叱ってしまい、自分がそれを阻害してしまった。その結果、自己嫌悪を感じてしまった。
そのような自分に気付ければ、感情に流されて叱ってしまうことも減るのではないでしょうか。イライラに任せて怒ってはいけないと、冷静に思えるようになるでしょう。
より良い子どもへの接し方が意識できる
感情的な叱り方を減らすためには、感情的になっている自分に気付くことが必要です。それを自覚できてはじめて、対処法が腑に落ちるものです。
怒鳴ってしまう前に、怒りを感じている自分に気付き、いったん深呼吸する。別の部屋に移り、気持ちを落ち着かせる。怒鳴る以外の方法で子どもに問いかける、など冷静な指導方法が判断できるようになるでしょう。
イライラした気分を感じるのは自然なこと。しかしその「気分」に振り回され感情的に行動するのではなく、「気分」を自覚し、行動を選択する。すぐに実践できることではありませんが、そのような姿勢でいることが、自己嫌悪を減らすことにつながると考えます。
こういったノウハウは、他人から教えられても、実践するのは難しいものです。その必要性や大切さが、親自身の腑に落ちてはじめて、行動に反映するものでしょう。
その点コーチングはその対策を親の内面から引き出します。親もよりリアルに、子どもへの接し方を考えられるのではないでしょうか。
親にこそコーチングが必要
コーチングの手法は、親が自分の感情に気付くきっかけになります。また、子どもの自主性を伸ばす子育てのヒントにもなるでしょう。
近年子育てにコーチングを取り入れる動きは徐々に広がりを見せています。ただし、それは多くの場合、親が子どもに対して行うコーチングである場合が多く、親自身を対象としたコーチングはさほど重要視されていません。
とはいえ、子育てを行う親にコーチングのマインドが根付いてこそ、その効果が発揮されるというもの。また多くの困難に直面して、いっぱいいっぱいになりがちな親こそ、サポートを受けるべきではないでしょうか。
その点で、まず親にこそコーチングは必要だと言えます。親を導くことができるコーチも、今後ますます求められるでしょう。
叱った後の自己嫌悪を前向きにとらえよう
本記事では、子どもを叱ったあとに親が感じてしまう自己嫌悪に対する対処法を、コーチングの手法を手掛かりに考察しました。
感情的に叱ってしまった際の自己嫌悪は、「より良い子育てがしたい」という気持ちの表れでもあります。自己嫌悪を機に自身を振り返り、より良い子どもへの接し方を見直すことで、子どもも親も成長につながります。
イライラする気持ちに流されていては、感情的な指導と自己嫌悪の負のループを抜け出すことは困難です。まずは自分の気持ちに気付き、適切な対処ができるよう冷静になることが大切です。
コーチングの手法は、そこへ大きなヒントを与えてくれるものだと言えるでしょう。