ビジネスの現場などで、コーチングを取り入れ、社員のキャリア育成などに活かす企業が増えてきました。社員の自主性を促すコーチングの手法は、企業の成長に大きな助けとなるものです。
また最近では、子どもにコーチングを行い、自主性や才能を伸ばそうという考えも高まっています。教育の場でも、コーチングの姿勢で子どもたちに向き合うことが、重視されてきているのです。
しかし、コーチの側である親は、本当にコーチングの意義について理解しているでしょうか。むしろ親こそがコーチングの効果を体感し、子育てや教育への向き合い方を再考する必要があるように思います。
本記事では、子どもを育てる親の側にこそ、コーチングが必要である理由や、コーチングが親と子に与える効果について、考察していきます。
コーチングは教育においても重要
まずはそもそもコーチングとはどのようなもので、どういった姿勢で行われるかについて確認していきましょう。
コーチングが教育に導入される重要性についても、併せて解説していきます。
子どものコーチングで、コーチ側になる親は、その意義をしっかり理解しておく必要があるでしょう。
コーチングとは?
コーチングはそもそも「馬車」を語源とし、1500年代から人々を導く手法として認識されてきました。馬車が主人を行き先まで送り届けるように、コーチはクライアントを目標達成まで導きます。
ただしコーチングにおいて、最重視されるのはクライアントの自主性。クライアントが自身で思考し、目標を認識、行動していくことを促すのがコーチングです。
なにかしら知識を与えたり、具体的な治療を行ったりするものではありません。コーチはあくまでもクライアントに問いかけ、クライアント自身の思いを整理し、自主的に活動していくことをサポートします。
コーチングを行う姿勢とは?
コーチングではクライアントの自主性を重要視するため、コーチは良し悪しなど、評価を行うことはしません。
質問をし、クライアントに思いを言葉にさせ、それを傾聴し、褒めも否定もせず、考えを整理することを促します。
クライアントから発せられた言葉は、自身の思いに基づくため、そこに自主性が伴います。またその過程でクライアントは、抱いていた迷いや不安が整理され、自分の意志で前進する自信が生まれます。
クライアント自身が目標を定め、みずからの意志で進んでいく姿勢が、コーチングでは養われるというわけです。
教育現場で重要視されるコーチング
昨今、教育現場では子どもたちの「生きる力」の育成が、大きなテーマとなっています。
予測不能な情報化社会で、自分で物事を判断し、自分で知識を深め、自分で行動し問題解決していける能力こそが、もっとも重要です。
従来の詰め込み型教育や、暗記一辺倒の学習のみでは、ありとあらゆる情報が錯綜する社会で、自分を保つことが難しくなってしまいます。
そのような時代を生き抜く力の育成は、まさにコーチングの方向性と合致します。誰かに与えられた知識を妄信するのではなく、自分で考えて判断を下し、生きていく姿勢が大切です。
コーチングは、そういった大きな教育課題の解決に、アプローチできるものなのです。
親にコーチングが必要な理由とは?
今日の教育、ないしは家庭での子育てにおいて、子どもの本質的な能力を高めるコーチング。その重要性は、これからもますます高まっていくでしょう。
しかしそれが正しく子どもに施されるには、それを行うコーチ側、つまり親や教育者が、コーチングの意義についてしっかりと理解することが必要です。
ここからは、子どもよりも前に、親にこそコーチングが必要である理由を解説していきます。
親がコーチングのメリットを理解できる
ビジネスやスポーツの世界では、その意義が認識されてきているコーチングですが、果たして親や教師の間に、どれほどの認識が、なされているでしょうか。
多くの親が、コーチングについて、言葉は聞いたことがあっても、その大切さややり方など、理解していないのが現状でしょう。
ただしそのような親も、子育てや教育において、疑問を感じ、悩みを抱えることもあるでしょう。
何のためにこんなに苦労して子育てを行っているのか。子どもは愛しているけれど、ついついイライラしてしまうなど、迷ったり、戸惑ったり、自己嫌悪に陥ることもあるでしょう。
そのような自身の思いでさえ、コントロールできていない状態で、子どもをコーチすることなどできません。
感情的に叱ってしまったり、自分の思うように子どもを服従させてしまったりなど、子にも親にも好ましくない状況を生み出しかねません。
そのような時、親がコーチングを受ければ、自分の子育てへの思いを整理できるはずです。同時にコーチングにどのような効果があり、どういった心境の変化が得られるか、実感できることでしょう。
自己肯定感の高まりを親が実感できる
それでは、コーチングで実感できる心理面での効果はどのようなものでしょうか。
コーチングには、自己肯定感を高める効果が見込めます。これまで自分の心の中でだけ考えていた思いが、コーチの助けによって可視化し、整理することができます。
何に価値を見出し、どのようにありたいのか。また辛い場面を、どのような心持ちで乗り越えればいいのかなどが鮮明になってきます。
そうなれば、自分が、自分の意志で成長できているという自信が得られ、苦しみさえも目標達成のための過程と捉えられるようになります。
コーチングを経験すると、クライアントは自己肯定感の高まりが感じられるのです。
このような心理面での効果を、コーチの立場になる人は認識しておく必要があります。親がこのことを実感した時、子どもへのコーチングの重要性が、理屈ではなく、認識できることでしょう。
適切な子育てコーチングが可能になる
子どものコーチングを考える際に、よく取り上げられるのが「子育てコーチング」です。親が子どもの思いを傾聴し、問いかけ、子どもが自身で思考し、行動していくことを促します。
それを重ねるうちに子どもの主体性が育ち、同時に自分が無条件で認められているという自己肯定感が養われていきます。
しかしこの子育てコーチングも、親のコーチングに対する理解がないと進んでいきません。
誤った認識のもと行われると、それが一定の答えへ導く「指導」になったり、過干渉になることすらあります。それでは親も子も、どちらも成長しません。
そのような際、コーチングの重要性や意義を親が理解していれば、子どもに正しくコーチングを行うことができます。
また、親の子育てに対する思いが整理されていれば、難しい状況に直面しても、前向きに子どもへ向き合えるようになります。
このようにコーチングは、子にも親にも、どちらにも良い効果を与えるものです。
ただしそのためには、親自身が、自分の気持ちについて整理をしておく必要があります。
その点で、子どものコーチング以前に、まずは親がコーチングを受け、自身の思いや、子育てへの向き合い方について、整理しておくことが大切です。
正しいコーチングは、子どもも親も伸ばすもの
本記事では、子どもの教育に、いかにコーチングが大きな効果をもたらすか、そしてそのことを、まずは親が知るべきである点について解説してきました。
複雑で予測困難な情報化社会。子どもたちはそのような世界を、生き抜いていかなければなりません。
そのような未来に立ち向かう子どもたちに必要なのは、自分で考え、自分で行動していく、「生きる力」です。大人には、それを育んでいく役目があります。
しかしそのためには、まずは親や教育者をはじめとする大人が、「生きる力」を醸成させていかなければいけません。そしてそれを育てるのがコーチングです。
親がコーチングの意義を正しく理解し、子どもにコーチング的姿勢で向き合ったとき、はじめて子どもはコーチングの恩恵を得られます。
その点で、まず子育てを行う親にこそ、コーチングは必要なものだと言えるのです。