小・中・高等学校の不登校の児童生徒が約30万人と急増したことを受け、文部科学省が取りまとめた「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)。
COCOLOプランにはこれまで以上に踏み込んだ、不登校の子どもたちへの「学びの保障」の姿が示されています。この記事では、COCOLOプランが目指す学校の姿や、その取り組みについて見ていきたいと思います。
COCOLOプランには、不登校の子どもたちの支援を学校などの公的機関だけで行うのではなく、フリースクールやNPOなど、民間との連携のもと推し進めようという姿勢が示されています。
フリースクールの立ち上げを目指す人や、教育に関わる仕事を志している人も、これからの学校の環境改善の方針については、しっかりと把握しておく必要があるでしょう。また、学校の取り組みを知ることで、自身の活動の方向性がより明確になるかもしれません。ぜひ最後まで目を通して見てください。
COCOLOプランが目指す学校の姿とは?
そもそもCOCOLOプランは学校のこれからの役割をどのように示しているのでしょうか。COCOLOプランの趣旨や、学校の「風土」と不登校の関係などについて解説します。
COCOLOプランが重要視するのは「学び」へのアクセス
まず押さえておくべきなのが、COCOLOプランはすべての子どもたちが、学びから「誰一人取り残されない」ことを目標としている点です。
学校に行けなくてもオンラインで学びの場を得られるようにすることや、校内教育支援センターの充実など、不登校の子どもが学びにアクセスできる環境の整備を目指しています。
不登校の状態にある子どもたちの、学校への復帰を必ずしも第一目標とせず、不登校であってもそれぞれのニーズに合った方法で学びにアクセスできることを意図している点は、理解しておく必要があります。
学校の風土が子どもの欠席日数に影響を与える
とはいえ学校のあり方については、現状でもさまざまな課題が挙げられます。COCOLOプランのなかでも、学校の風土と子どもたちの欠席日数との関連について取り上げられており、学校の環境改善は、今後よりいっそう求められることとなるでしょう。
学校の風土の改善は、子どもたちが安心して学べる環境を整えていくことにつながります。この点は、フリースクールなど、子どもに学びの場を提供する人は、誰もが考えておく必要があります。
目指すのは「すべての子どもが活躍できる場所」
国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターが発行している「生徒指導リーフ」には、不登校対策に対し学校が取り組むべきこととして、「全ての児童生徒が学校に来ることを楽しいと感じ、学校を休みたいと思わせないような、日々の学校生活の充実」が示されています。
すべての子どもが学校を、落ち着ける「居場所」として捉え、それぞれの子どもが活躍できる場面を見出せるようにすることが、不登校の未然防止になるとしています。
学校がこのような姿を目標としている点は、フリースクール関係者など教育に携わる人は、誰もが認識しておく必要があるでしょう。またこのことが、フリースククールの環境改善にも何らかのヒントを与えるかもしれません。
出典:[生徒指導リーフ14S不登校の予防~発達障害の特性と不登校リスク~]
COCOLOプランが掲げる学校の取り組みとは
それでは具体的に、学校の環境改善のためにCOCOLOプランがどのような取り組みを掲げているかについて見ていきましょう。
この考え方や課題解決のプロセスは、フリースクールなどの環境整備においても大いに応用できるものでしょう。
心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する
COCOLOプランではICT(情報通信技術)を活用のうえ、子どもたちの毎日の健康観察を行い、心身の状態の変化への気付きや、相談支援のきっかけづくりを増やすことを目標としています。そうすることで子どもたち自身も、自分の心や体に向き合う機会を得られるでしょう。
子どもたちに心のSOSをが見られれば、教師やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、養護教諭、学校医などの専門家が支援を行います。
このような、子どもの小さなSOSを見逃さない「チーム学校」の体制づくりが、COCOLOプランでは求められているのです。
保護者への支援も明記
子どもたち本人だけでなく、保護者の支援についても、COCOLOプランには明記されています。
不登校の子どもを持つ保護者が、一人で悩みを抱えることのないよう、各教育機関が相談窓口を整備し、不安を和らげる体制を敷くこととしています。
なお、その相談窓口では、フリースクールや保護者の会などに関する情報提供が行われます。
学校の風土を「見える化」
不登校との関連があることが示されている学校の「風土」について、COCOLOプランでは「見える化」を進めることとしています。
児童生徒の授業への満足度や教職員への信頼感、学校生活への安心感等を、学校評価の仕組みを活用し把握。そのうえで、それぞれの学校の風土や雰囲気をふまえた学校運営がなされることが掲げられています。
この改善活動においては、学びの多様化学校やNPO、フリースクールなどの取り組みも参考にすることとしており、子どもたちが安心して学べる学校づくりが目指されています。
誰もが前向きに学べる「授業」の改善
COCOLOプランでは、学校生活のなかでもっとも長い時間をかける「授業」についても、改善が必要だとされています。
子どもたち一人ひとりの学習進度や興味・関心に応じた指導で、一方通行でない柔軟な学びを実現し、子どもたち誰もが前向きに学べることを目標としています。
そのために1人1台の端末の活用や、学びの多様化学校の取り組みなどを参考にすることが方針として示されています。
多様性を尊重し誰もが共に学び合える環境を整備する
障がいのある子どもや、外国人の子どもなど、誰もが可能な限り共に充実した時間を過ごせる条件整備も重要視されています。
障がいのある子どもを担任だけでなく学校全体で支えることや、外国人の子どもが長所や強みを発揮できるような環境整備が求められています。
これからの学校の環境整備の方針について理解しよう
このようにCOCOLOプランには、これからの学校の「学びの姿」について、さまざまな方向性が示されています。また、端末のデータを活用した支援や、学校内の働き方改革など、改善活動を推し進めるための、具体的な手段・方針についても明示されています。
子どもたちが心地よい空間で学習生活が行え、明日また行きたいと思えるような学校環境の構築が求められているのです。
さらにCOCOLOプランでは、フリースクールなど民間との連携体制も重視しています。学校の環境整備、改善活動の方向性については、フリースクールの関係者も理解しておく必要があるでしょう。改善の方針やノウハウについて、共有できるポイントもあるかもしれません。
COCOLOプランの趣旨は、すべての子どもが、それぞれの方法で学びにアクセスできる環境を整えることです。教育に携わる人はそれぞれの立場から、子どもたちのためにできることがあります。
子どもたちが誰一人取り残されることのないよう、さまざまな学びへの道筋が用意されることを願います。