子育てで多くの親を悩ませる課題のひとつに「子どもの叱り方」が挙げられます。
「子どもが叱られることがイヤなのは分かっている」
「それでも叱らなければいけない場面もある」
「しかしつい我を忘れて叱ってしまい、親自身が自己嫌悪を感じてしまう」
このように考えている親御さんは少なくありません。
子どもに届き、かつ親自身も自己嫌悪を感じない「上手な叱り方」を考えるには、まずは親自身が叱り方について冷静に見直す必要があるでしょう。
この記事では、親が冷静に自身の叱り方を見つめられるよう、子どもを叱らなければいけない場面や、結果的に自己嫌悪に陥る叱り方のパターン、そして子どもに思いを正しく伝えるための上手な叱り方について解説します。
子どもを叱らなければいけない場面とは
子どもを感情的に叱らないために、まずはどのような場面で親は子どもを叱るべきなのか、考えてみたいと思います。
親が叱り方で悩むパターンとして、「必要のないことにまで言及し、子どもを傷つけてしまった」と感じる状況が多く見受けられます。
普段から「叱るタイミング」を自覚しておくことで、気分に流されずに子どもを叱ることができるのではないでしょうか。
危険な行為を注意するとき
子どもが自身の行動を深く理解しないまま、自分や他人を傷つける行為におよびつつあるときは、親が正しく叱る必要があるでしょう。
道路に飛び出す、遊びの内容が危険な範囲におよぶ、周囲が見えなくなってケガをしたり友だちを傷つけたりする恐れがあるなど、大人の目から「これは危険だ」と感じたときは、叱るべきタイミングといえます。
そのようなタイミングで効果的に叱ることで、子どもは普段から「危険は回避しなければいけないものだ」と理解するようになるでしょう。
社会ルールや道徳上の誤りを正すとき
他人との関わりを健全に保ち、社会性を持って生活をしていくときに、子どもが守るべきルールを踏み越えた場合は、親がしっかりと叱ってあげる必要があります。
公共の場でさわいだり、他人へ暴力をふるったりしたときは、それは「いけないこと」だとはっきりと伝えなければいけません。子どもがしたことで、周囲の人がどのように迷惑するのか、友だちがどんな気持ちになったかなど、子どもが自身の誤りに気付けるように、話してあげると良いでしょう。
これらの叱るべき内容は、問題が起きたときにできるだけ早めに、端的に子どもへ伝えるべきです。そうすることで、子どもは自分がなにで叱られているか、どうしたら問題を解決できるかをその場で考えることができます。
親の自己嫌悪を招く間違った叱り方
ここからは親が叱ったあとに自己嫌悪を抱えてしまいがちな、間違った叱り方のパターンについて見ていきます。
叱ることは状況によっては必要なこともありますが、間違った叱り方を認識しておくことで、過剰に叱りすぎてしまったり、関係のないことで子どもを傷つけてしまったりすることを防げます。
感情的に怒鳴ってしまう
叱ることを、怒鳴ることと勘違いしている親がいます。確かに語気が荒くなったり、つい口調が強くなったりしてしまうこともあるかもしれません。しかし感情的に子どもを怒鳴っても、子どもは恐怖しか感じず、なにが指導の本質なのかが分からない状況を招きます。
危険な行為や、正しくないふるまいを注意する意図だったとしても、怒鳴られた子どもは親に怒られたショックしか感じられません。怒られることを避けるために、親の機嫌をうかがうばかりで、問題となる行為を正そうという気持ちは持てないでしょう。
親も委縮した子どもの様子を見て、自分の叱り方は正しくなかったと自己嫌悪に陥ってしまうことがあります。
イライラしながら長時間叱る
叱るきっかけはあったとしても、指導していくうちに親自身のイライラが募ってしまい、その結果長々と子どもを叱り続けてしまうケースが見られます。
このように叱られた子どもは、不快な気持ちを抱くばかりで、結局なにが問題だったのか、これからどの点を改善していけばいいのか理解できないでしょう。ただ漠然と、親への恐怖心と嫌な気持ちを抱くばかりで、具体的な問題の解決にはつながりません。
なにが悪いのか分かっていないため、子どもは再び同じ問題行動を繰り返します。それを受け親も「前も言ったよね」「どうしてわからないの」など、人格を否定するような叱り方となり、悪循環を招きます。
子どもの人格を否定してしまう
子どもの性格や考え方など、問題の本質とは異なることまで言及してしまう叱り方も、子どもを傷つけるばかりです。
はじめはなんらかの理由で叱りはじめたのだとしても、いつしか叱る内容が抽象的になり、子どもの考え方や人間性まで否定してしまう…。そのような状況は避けなければいけません。
大切なのは問題となる事柄が起きた際に、「迅速に」「具体的に」「端的に」叱ることです。感情に任せてだらだら叱っても、子どもは嫌悪感を抱くばかりで、結局何が問題だったのかが理解できません。
そして委縮したり、反発したり、怒られることだけを恐れ親の顔色をうかがったりする子どもの様子を見て、親が自己嫌悪を感じることとなります。
子どもに届く上手な叱り方とは?
子どもを叱ることは、子どもの問題を正し、健全な姿へ導いてあげることが目的です。つまり、叱る内容や、改善の方向性が、子どもにしっかり届かなければいけません。
ここでは子どもの心にしっかり届く、正しい叱り方について考えてみましょう。
子どもの気持ちを認めてあげる
子どもがなにかしらの問題を起こしたとしても、それを頭ごなしに否定していては、なにが悪いことなのかが伝わりません。
もちろん場合によっては、瞬間的に強い態度で注意することも必要です。本人が自覚なく危険な行為をしたときや、ケガや事故につながるような突発的な状況で、強く指導する場面もあるでしょう。
しかし大切なのは、子どもが「なにが悪かったのか」「次からはどうするべきか/なにをするべきでないのか」を理解することです。そのためには、子どもの気持ちをまず親が認めてあげて、そのうえでなにが問題なのかを教えてあげることです。
そのようにすれば、子どもは叱られたとしても「親が自分を大切に思っていること」を理解し、叱る内容について考えようという態度になります。
「なぜ叱られているか」を子どもが分かるようにする
叱ることは、子どもを正しい状態へ導くことなので、「なにが問題なのか」「どうするべきか」を子どもが理解できなければいけません。
そのためには、親が「なにを伝えたいのか」「なんで叱っているか」を説明してあげることも大切です。
威圧的な姿勢で怖がらせて、態度を改めさせるような指導では、問題の本質が子どもに伝わりません。子どもはなにがいけないのか理解できず、問題となる行為や言動を繰り返すでしょう。
子どもの目を見て内容を絞って叱る
叱る姿勢や体勢も重要です。叱るときは子どもの目を見て、はっきりと言葉を伝えるようにしましょう。
なにかのついでにだらだらと叱ったり、周囲に人がいる状況で声かけのように注意したりしても、子どもはその内容を聞き流してしまい、問題について考えることはしないでしょう。
また複数の事柄や、「考え方」のような漠然とした内容を叱っても、子どもの行動や言動は改まらないばかりでなく、人格を否定されたと感じ、自己肯定感を下げてしまう可能性があります。
子どもを叱るときは、目を見て、内容を絞って、問題が起きたらすぐに、端的に叱ることが大切です。
褒めることも忘れない
叱ることとセットで、褒めることも欠かしてはいけません。子どもが叱られた内容について改善しようと努めたり、姿勢を改めようとしたりしたときに、その様子を評価してあげましょう。
ポイントは、結果よりも努力や過程を認めてあげることです。仮に好ましい成果につながらなかったとしても、「〇〇を頑張ろうとしたね」「お母さん/お父さんは応援してるよ」「次は〇〇にチャレンジしてみようか」など、具体的に背中を押してあげることで、子どもは自信を強めていくことになります。
はじめは注意であったとしても、それが健全な行動につながれば、それは大いに認めてあげると良いでしょう。
親は自分の叱り方を冷静に見つめる必要がある
この記事では、子育てで親が悩みがちな「叱り方」について、叱るべきタイミングや、叱る際の好ましい姿勢などについて解説してきました。
叱ることの目的は、子どもの行動や言動を健全な姿に正し、子どもが自立して生きていけるよう導くことです。注意する気持ちが強まるあまり、親が感情的になってしまうと、本質が伝わらないだけでなく、親自身も自己嫌悪を抱くこととなります。
そうならないためには、まず「叱る」行為をする親自身が、自分の考え方やクセ、叱り方のパターンについて冷静に理解することが必要でしょう。それを把握することで、子どもを上手に叱れ、子どもも親も成長していける健やかな流れが生まれます。