発達障害、特に自閉症のお子さんとどうコミュニケーションをとればいいのか悩んでいませんか?
言語が出ていないレベルのお子さんでも、言語を使わずコミュニケーションをとることができます。
この記事では、そもそもコミュニケーションとは何か、非言語性のコミュニケーションと言語を使うコミュニケーションの違いや、発達障害を持つ子とのコミュニケーションの広げ方について解説します。
コミュニケーションとは
一言でコミュニケーションと言ってもその意味合いはさまざまです。
人と人が接するときに必要な意思疎通や心を通わせること、というイメージが強いのではないでしょうか。
コミュニケーションは言葉を交わすだけではなく、非言語でもとることができます。
つまり、発語がない自閉症のお子さんともコミュニケーションをとることが出来るのです。
コミュニケーションにおける
- 非言語性のもの
- 言語を使うもの
それぞれについて解説します。
非言語性のもの
非言語性のコミュニケーションとは、目と目を合わせたり、握手をしたりと、言葉を使わなくても相手とコミュニケーションをとることを言います。
自閉症の子の非言語性コミュニケーションとしては、欲しいものがあったときに支援者や周りの人の手を持って欲しいものの方へ投げる「クレーン現象」や「お願い」「ちょうだい」のジェスチャーなどがあります。
お子さんによって、今後言語が出てくるのかはわかりません。
まだ小さいうちや言語の出ていないお子さんとは、この非言語性コミュニケーションをとることが重要です。
非言語性のコミュニケーションを獲得したお子さんは、保育園や幼稚園、学校や家庭において自分の意志で要求したり拒否したりできるようになるからです。
言語を使うもの
言語を使うものは、私たちが日常行っているコミュニケーションなのでイメージしやすいですよね。
自閉症を持つお子さんも同じで、まずは自分の要求を伝える「お願い」や「ちょうだい」、拒否を伝える「いや」や「やめて」などのコミュニケーションがとれるようになることが大切です。
要求や拒否は基本的な意思表示であり、特に要求により、ものだけではなく「人」への興味も広がってくるからです。
自閉症のお子さんは、人に対する興味が希薄なお子さんがたくさんいます。
しかし社会で生きていくには、困ったときに人に助けを求めることが必要です。
私たちもひとりで生きているわけではなく、困ったときは周りに助けを求め支え合って生きていますよね。
自閉症のお子さんも同じで、まずはものだけではなく「人」を認識し、「人は頼れる存在」ということを知る必要があります。
コミュニケーションは人が生きていくうえでとらなくてはならないものなので、自閉症のお子さんも幼少期からコミュニケーションを広げていくのが大切です。
発達障害を持つ子とのコミュニケーションの広げ方
具体的に、発達障害を持つお子さんとどのようにコミュニケーションを広げていけば良いのでしょうか。
- 支援者が頼れる存在になる
- ジェスチャーでのコミュニケーション
- 言語でのコミュニケーション
それぞれについて解説します。
支援者が頼れる存在になる
重度の自閉症のお子さんは、まず人を人として認識していない場合があります。
ものにしか興味がなく、ひとへ興味が向かないお子さんもいます。
その場合、まず支援者は自閉症のお子さんにとって「頼れる存在」となることが大切です。
具体的には、自閉症のお子さんが欲しいものを渡したり、困っているときに手伝うことで、まず支援者の「手」を認識してもらいます。
「手」を認識できるようになったお子さんは、手=使えるものと理解し、欲しいものがあったときに手を持って欲しいものの方へ投げるようになります。
これがクレーン現象と呼ばれるものであり、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
クレーン現象は「前、この手を投げたら欲しいものがもらえた」という経験から「手を投げたら欲しいものが手に入る」と思い、出る現象です。
クレーン現象は決して悪いものではなく、これも自閉症のお子さんにとってコミュニケーションの一つです。
まず支援者は使える手としてお子さんに認識してもらいましょう。
その次に、徐々に欲しいものを持った手を支援者の顔の前に持っていきます。
欲しいものを持った手を顔の前に持ってくると、「顔」を認識するようになります。
それまで「手」としてしか認識されなかった支援者の「顔」も認識するようになり、徐々に支援者自身を認識するようになります。
すると自閉症のお子さんにとって支援者=頼れる人、要求をかなえてくれる人、困った時に助けてくれる人となるのです。
これにより、自閉症のお子さんは支援者を認識し、徐々にものから人に対する興味も広がり、コミュニケーションも広がるきっかけとなります。
ジェスチャーでのコミュニケーション
支援者を認識するようになったら、次はジェスチャーでのコミュニケーションに移行していきます。
支援者の手を持っていく、などの直接的な操作から、ジェスチャーという間接的な操作へと変化させます。
ジェスチャーは自閉症のお子さんのコミュニケーションを広げる大きな一歩です。
まずは「お願い」や「ちょうだい」などの要求からコミュニケーションをとれるようにしましょう。
要求は、一番出やすいコミュニケーションのひとつだからです。
お子さんの欲しいもの(おもちゃや食べ物など)を目の前に提示し、お子さんが手を伸ばしたときがチャンスです。
支援者はお子さんの手をとり、「お願い=両手を叩く」「ちょうだい=手のひらを出す」などのジェスチャーを教え、言葉を言いながら動きを繰り返し教えます。
これを何回も何回も繰り返すことで、徐々にお子さんは「このジェスチャーをしたらおもちゃ(または食べ物)がもらえた」と学習し、支援者が動かさなくても自分でジェスチャーが出来るようになります。
ジェスチャーという間接的な操作ができるようになったお子さんは、指差しや手差しなどの方法で要求を伝えてくれる場合もあります。
動きは保育園、幼稚園、学校と家庭で統一しておくと、いつ、どこでジェスチャーをしてもお子さんの要求を叶えることができ、コミュニケーションをとることができます。
要求のあとには、「いや=首を振る」という拒否としてのコミュニケーションの方法も伝えましょう。
これは支援者が「いや」といって首を振る動作をやってみて、その動作をお子さんが真似ることで覚えていきます。
そのため、まず支援者を認識する必要があります。
また、支援者の真似ができる段階までいかないと難しいため、まずは要求を確立することが大切です。
言語でのコミュニケーション
支援者を認識し、非言語でのジェスチャーを使ったコミュニケーションをとれるようになったら、発語のあるお子さんは言語でのコミュニケーションに移行します。
教え方はジェスチャーのときと同じで、お子さんが「お願い」や「ちょうだい」などのジェスチャーをしたときに、支援者が「お願い」「ちょうだい」をその都度言い、お子さんに真似してもらいます。
全て言えなくても「お(お願い)」「ちょ(ちょうだい)」など一文字だけ真似するところから始めても良いでしょう。
言語を発することにより自分の要求が叶った経験を持つお子さんは、言葉=便利なものという認識になり、言語でのコミュニケーションをとるようになるかもしれません。
もちろん、全てのお子さんに発語が見られるわけではありません。
また、例え言語を介さなくてもコミュニケーションをとることができるという点は、支援者が理解しておく必要があります。
親の中には、どうしても言葉を喋ってほしいと願う人も大勢いるからです。
必ずしも言語を介したコミュニケーションにこだわる必要はありませんが、発語のあるお子さんは言語でのコミュニケーションを獲得することで、コミュニケーションや人への興味が広がっていきます。
まとめ
人への興味や認識がないレベルのお子さんがコミュニケーションを広げるには、まず支援者を頼れる存在として認識することが大切です。
支援者を認識できたら、徐々に手を直接欲しいものへもっていくという直接操作の段階から、ジェスチャーや指差しに徐々へ移行していきましょう。
直接操作だけではなく関節操作できるようになると、自閉症のお子さんのコミュニケーションや人への興味は広がっていきます。
発語があるお子さんは、ジェスチャーだけではなく「お願い」や「ちょうだい」などの言語を使ったコミュニケーションの方法を伝えていくのが大切です。
言葉を使えるようになると、よりコミュニケーションが広がります。
コミュニケーションが広がることで、生活するうえで困ったときや要求があるときに自閉症のお子さんがより安心して生活できるようになります。
コミュニケーションが今どの段階にあるか、保育園や幼稚園、学校や家庭で常に共有し、どの場所でも同じコミュニケーション方法がとれるようにしておくことが大切です。