子育てを行ううえで重要視されるのが、子どもの自己肯定感を育むことです。予測不能な未来を生き抜くために、子どもたちには自分で考え行動していく力が求められますが、それが成り立つ前提として、自己肯定感の醸成が必要です。
ただそれを育てる側、つまり親の自己肯定感はどうでしょうか。親の自己肯定感が低いと、いくら付け焼刃で教育を施そうとしても、はたきかけの方法や言葉の端々から、子どもにもその影響が伝わるものです。
そのような状況を改善するために有効なのが、親へのコーチングです。本記事では、親の自己肯定感を高めるために、いかにコーチングが有効であるかについて解説していきます。
親の自己肯定感の低さが子どもに影響を与える
まずは、親の自己肯定感が低いと子どもにどのような影響があるのか、子どもの心理に着目して考察してみましょう。
自己犠牲の子育ては、子どもにも親自身にも良い影響をもたらさないことを、しっかり認識してください。
子どもの自己肯定感が下がるとどうなるか
そもそも子どもの自己肯定感が育たないと、どのような事態を招くのでしょうか。これは、なにかに失敗した時のことを考えるとわかりやすいでしょう。
人はだれしも、大なり小なり失敗を経験します。「決まり事を守れなくて叱られた」「テストで良い点が取れなかった」「友達と仲良くできなかった」。子どもたちも大人と同じように、多くのことで落ち込むものです。
しかしそれらを乗り越える経験を通して、人は強くなっていきます。失敗を糧として、社会を巧みに生き抜くすべや、他者との関係の築き方を、身につけていくのです。
親が子どもに望んでいるのもそのような姿のはずです。失敗を恐れ挑戦しないことや、他者との摩擦を恐れ、自身を押し殺していく態度を求めているわけではありません。
失敗をしながらでも、都度自分で考えて、立ち直って前進し、自己実現を果たしてほしい。それが親の願いでしょう。
しかし、もし子どもの自己肯定感が育っていないとどうなるでしょうか。失敗のたびに「自分には解決できない」と殻に閉じこもり、新たな行動さえやめてしまいます。失敗を恐れ、人と接することを怖がるでしょう。
他者へ責任転嫁を行うこともあります。自分が幸せでないのは、他人が自分を尊重しないからだ。周囲が変わらない限り、自分が変われるわけがない。そのように考えることもあります。
子どもは親の自己肯定感を見ている
しかし、無気力になったり、他人に責任を押し付けたりしていても、自身の状況は好転していきません。間違ってもいい、失敗してもいいから、その都度、前に進もうとする姿勢が、人には生涯必要です。
そのことを子どもに教えるのは、紛れもなく親です。親が子どもに教えるのは勉強やしつけだけでなく、人生に対する向き合い方すべてです。
些細な出来事でも、子どもは大人を見ています。なにか好ましくないことが起きた時、親がネガティブな言葉を並べ、他人を恨んだり、自己嫌悪に陥ったりしていると、子どもも悪い出来事にはそのように対応するものなんだという認識が根付いてしまいます。
そうではなく、失敗はそれとして正しく受け止め、そこから学べることは無いかと考え、それを親自身の目標のために活かし、できる限りポジティブに対処しているのを見れば、子どもも失敗のたびに立ち直ればいいと考えられるようになるでしょう。
そのようにして子どもの「生きる力」は養われていきます。
コーチングで親の自己肯定感を高めよう
親の自己肯定感の高さは、そのまま子供に伝播します。子どもの自己肯定感を育てたいのであれば、まずは親の自己肯定感を高めるべきです。
しかし大人の自己肯定感を高めるのは、子ども以上に難しいと言えます。大人は頻繁に褒められることもないでしょう。それに評価されたとしても、それを素直に受け取れないこともあります。
そのようなときに効果を上げるのがコーチングです。ここでは親の自己肯定感を高めるために、いかにコーチングが威力を発揮するか、見ていきましょう。
自己肯定感はありのままを認められること
そもそも自己肯定感とはどのようなものでしょうか。自己肯定感は、シンプルに言えば自分の存在そのものが認められる感覚です。
「資格を持っているから」「給料が高いから」「容姿が平均以上だから」など、何かの条件をクリアして抱くものではありません。
そこを勘違いして、自己肯定感を落としている大人は大勢います。そして自分で自分を認めるため、他者からの評価を集めるのに躍起になっている姿も、世間ではよく見られます。
社会生活の中では、つい他人と自分を比較してしまうのは、仕方のないことかもしれません。しかし他人に評価されてはじめて、自分の存在が認められるという認識では、それが叶わなかったとき、自己嫌悪に陥るしかなくなってしまいます。
そうではなく真の自己肯定感は、自分はそもそも何かに価値を測られるものではなく、失敗しようが、どのような状況だろうが、主体的に生きてよいのだと考えることです。自分に価値があるかないかなど、そもそも考える必要がありません。
褒めるばかりでは真の自己肯定感は育たない?
子育てで子どもの自己肯定感を育むためには、褒めることが推奨されます。確かに、幼い子どもにとって、絶対的存在である親から賞賛されることは、この上ない喜びでしょう。
褒められた子どもは自信を抱いて、積極的に新しいことにも挑戦していくはずです。その点では、褒めることが大切なのは決して間違っていません。
しかし褒められることが自己肯定感を測る基準になると、やがて褒められることが正義で、そうでないことが悪と考えるようになります。子どもは自分を押し殺してでも、評価されることを求めるようになるでしょう。
そうなると子どもは、失敗するかもしれない問題には挑戦しなくなります。自分ができる範囲で、褒められることをひたすらに追い求めるようになります。
それでは、本当に大切な「生きる力」を育むことにはなりません。
大人の自己肯定感を高めるためにコーチングは効果的
大人はどうでしょうか。褒められたり、評価されたりする機会さえ、それほど多くはないのが現状です。何かを褒められたとしても、それは「会社に利益をもたらしたから」「大きな成果を上げたから」など、なにがしかの条件を前提とするものです。
それを自己肯定感の指針としていては、自己肯定感はたいへん不安定で、下がったらもう再起不能。どんどん落ち込んでいくことになりかねません。
そんな時、自己肯定感を築いていく方法がもう一つあります。それがコーチングです。
コーチングは、クライアントに対し、基本的に賞賛や評価を行いません。正解も不正解も出さずに、ただただ発言や思考を、受け止めていく態度で行われます。
クライアントは「えらい」も「すごい」も言われません。具体的なアドバイスも受けません。ただし、存在、発言、思考、ありのまますべてが「全肯定」されるのです。
親は自己肯定感が下がりがちな環境にある
子育てをおこなう親は、子どもの自己肯定感を育てるべき存在でありながら、自己肯定感が下がりがちな環境にあります。子育てがうまくいかない、ついイライラしてしまう、子どもに怒りを覚えてしまう、そのような感情を抱くこともあるでしょう。
ましてや周囲の言葉、SNSの情報など「こうでなければ親失格」という基準が無意識のうちに出来上がってしまい、それとの乖離に自分のふがいなさを感じてしまいがちです。
「こうでなければいけない」の思考は、子どもに向く場合もあります。ほかの子ができることは、うちの子もできなければいけない。失敗する姿を、他人に見られてはいけない。
そのような思考になると、子どもが親の基準をクリアした時は褒め、できなければ否定する、という態度になりがちです。それを重ねるうち、子どもは親の評価を得ることが、すべての目標になってしまいます。
コーチングが育む親の自己肯定感
親も時には褒められることもあるかもしれません。ねぎらいの言葉をもらうこともあるでしょう。しかしそれも「子育てを頑張っているから」「自分のことは後回しにして、子どもに尽くしているから」など、自己犠牲であることを評価されていることが多いです。
コーチングは、そのような姿を褒めません。「良い親」であろうとなかろうと、ただ一人の人間として親の存在を尊重します。そのような経験を通して、親は真の自己肯定感に気付いていきます。
親自身が正しい自己肯定感を知れば、子どもへの接し方も変わってくるでしょう。親の基準に服従させるのではなく、子ども自身が自主的に物事を考え、取り組んでいく姿勢を重要視できるようになるはずです。
親の自己肯定感を高めることが、子育てでは第一に大切
本記事では子育てにおいて、親の自己肯定感が第一に重要であることを解説してきました。そして自己肯定感を高めるために、親へのコーチングが非常に意味を持つものであることが、理解できたと思います。
親が子どもへコーチングを行い、自己肯定感を高めることは大切です。しかしそのためには、まず親が本当の自己肯定感とは何か、実感として知っていることが重要でしょう。
子どもの自己肯定感を育てるために、教育を施す側である親が、コーチングを通して正しい自己肯定感を身につけてほしいと思います。