毒親は、子供によくない影響を与える可能性が高いです。しかし、具体的にどんな人が毒親といえるのか、子供にどんな悪影響を与えるのか、理解していない方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、毒親の定義や子供に与える影響、毒親を辞めるためにするべきことについて解説します。毒親を辞めたい人や、苦しんでいる親御さんをサポートしたい人は、ぜひ参考にしてください。
毒親とは?
毒親とは、子供に悪影響をもたらす(毒になる)親のことです。「毒」というと強烈な印象を抱くため、暴言を吐いたり暴力を振るったりと、虐待に近いことをする人を毒親だと認識している人もいます。
しかし実際は、子供がかわいいあまりに世話を焼きすぎたり、将来のために厳しい教育をしたりする場合も、毒親に分類されます。なぜなら、過保護や過干渉は子供の自発的な行動を制限する行為だからです。自発的な行動を制限すると、自分の意見を言えなかったり、指示されないと動けなかったりする子供に育つ可能性があります。
このように、悪気がなくても無意識に毒親になっている方が多くいるのが現状です。しかし「自分には関係ない」と思い、なかなか話に耳を傾けてくれない親御さんもいるでしょう。
毒親にはどんな特徴がある?5つのタイプを解説
毒親は、大きくわけて5つのタイプがあります。具体的には以下の通りです。
- 干渉しすぎる
- 世話を焼きすぎる
- 支配・管理しようとする
- 罪悪感を植え付ける
- 子供に関心がない
ここからは、それぞれについて具体的に解説します。
干渉しすぎる
1つ目は、子供に干渉しすぎるタイプです。子供の行動を制限したり、親の考えを押し付けたりします。
例えば子供が「友達と遊びに行きたい」と伝えても「あのお友達と付き合うのはやめなさい」と止めたり、好きなアニメを見ているときに「そんなものを見ても無駄だから勉強しなさい」と言ったりするのは干渉しすぎといえます。エスカレートすると、部屋に勝手に入ったり、スマートフォンの中をのぞいたりと、プライバシーを無視した行動をする親もいるでしょう。
干渉しすぎる親は、自分の期待通りに育ってほしい思いや子供をコントロールしたい気持ちが強いです。そのため子供の意見を無視したり、行動に制限をかけたりします。子供は自分の「やりたい」を満たせなくなるので、次第にストレスが溜まり、今後の成長に影響を及ぼす可能性が高くなります。
世話を焼きすぎる
2つ目は、子供に世話を焼きすぎるタイプです。子供を必要以上に甘やかしたり、先回りして手伝ったりします。
例えば、翌日の授業道具を揃えたり、着替えの準備をしたりするのは、本来子供自身がやるべきことです。しかし、世話を焼きすぎる親は、子供の代わりに準備をします。さらに、そのほかに必要なものがないか、忘れ物がないかの確認など、身の回りのことを全てやってしまうのです。さらにエスカレートすると「心配だから」と言い、子供が外出時に毎回送迎をしたり、欲しいものを何でも買い与えたりしてしまうでしょう。
世話を焼きすぎる親は、子供の面倒を見ることが生きがいであることが多いです。そのため、子供が自立するのを嫌がり、大人になっても世話を焼き続ける傾向があります。
支配・管理しようとする
3つ目は子供を支配・管理しようとするタイプです。暴言を吐いたり暴力を振るったりして、子供を思い通りにコントロールしようとします。
暴言を吐くタイプは、子供を否定することが多いです。「なんでこんなこともできないの?」「どうせ無理なんだからやめなさい」などと頭ごなしに否定し、子供の自尊心を削ります。暴力を振るうタイプは、学校の成績が悪かったり親の言うことを聞かなかったりするときに、殴る蹴るの行為におよび、無理やり従わせようとするのです。親にとって都合が悪いことが起きると暴力を振るい、子供を恐怖でコントロールします。
子供自身に何の問題がなくても、親の機嫌が悪いと暴言や暴力で子供に当たり散らすことも少なくありません。「あなたのためにこうしている」と言い張る親もいますが、ほとんどが自分のためです。しかし、親自身はその事実に気づいていないことが大半でしょう。
罪悪感を植え付ける
4つ目は、罪悪感を植え付けるタイプです。親は自分が被害者であることをアピールし、子供をじわじわとコントロールしようとします。
例えば「あなたを育てるために必死で働いたから、人生の一番大事な時期に全く自由がなかった」「あなたの成績がよくないから、周りの友人知人に馬鹿にされる」などと言い、子供の情に訴えます。このように言われると子供も反論しにくくなり、親の言うことを聞かざるを得なくなるのです。
罪悪感を植え付けるタイプの親は、子供が自分の言うことを聞くまで被害者をつらぬきます。しかし、言葉で伝えても子供が思い通りにならない場合は、暴言を吐いたり暴力を振るったりと行動を変える可能性もあるでしょう。
子供に関心がない
5つ目は、子供に関心がないタイプです。親としての責任を放棄し、ギャンブルやアルコールに依存したり、遊びや仕事に没頭したりします。
自分のことにしか興味がないので、子供の世話をするかどうかは気分次第です。時には子供が空腹でもご飯を与えなかったり、体調が悪そうでも病院に連れて行かなかったりすることもあります。また、早朝から遊びやパチンコに出かけて、深夜まで子供だけで留守番させる可能性もあるでしょう。
行為だけを見ると悪質に感じますが、本人は悪気がない場合も少なくありません。親自身の幼少期の家庭環境が複雑で、子供に関心を向けないことが当たり前だと思っていたり、そもそも愛し方がわからなかったりする場合もあります。
毒親が子供に与える影響とは?考えられる悪影響7つを解説
子供がどのような大人に育つかは、親との関わり方が大きく影響します。具体的には、以下の通りです。
- 自分の意見を持てなくなる
- 何かに依存しやすくなる
- 感情をコントロールできなくなる
- 自分は無価値だと思い込む
- 他人を信頼できなくなる
- 大人になったときに毒親になる
- 医療機関での治療が必要になる
ここからは、それぞれについて具体的に解説します。
自分の意見を持てなくなる
毒親に育てられた子供は、自分の意見を持てなくなることが多いです。幼少期から過干渉、もしくは過保護に育てられると、自分の意見を主張する場面が少なくなります。自分で考え、行動する機会を奪われ続けるため、主体性が育たなくなるのです。
また、親の指示通りに行動しなかったり、自分の考えを伝えたりするたびに強く怒られていた子供の場合、何か意見があってもグッと飲み込む癖がつきます。「伝えたら怒られる、自分の考えは間違っている」と考えるようになるからです。
背景はさまざまですが、「何も考えず親の言う通りにすれば良い」という考えが当たり前になると、自分の意見がなくなります。社会に出てから急に意見を求められても、戸惑ってしまうでしょう。
何かに依存しやすくなる
毒親に育てられた子供は、何かに依存する可能性があります。本来、親と子供は、適切なコミュニケーションを取りながら信頼関係を築いていくものです。子供は親にしっかり甘え、愛情を受け取って、自立心や自尊心を育てていきます。
しかし、過度に干渉されたり、自分のことを否定されたりし続けると、自立心や自尊心が育たなくなり、誰かや何かに頼らないと生きていけない状態になってしまうのです。そのためアルコールやギャンブルに依存したり、恋人が離れて行かないよう過度に尽くしてしまったりします。いきすぎると「本当は嫌だけど相手のためなら」と自己犠牲に走る可能性があるでしょう。
依存の程度は人それぞれですが、場合によっては医療機関での治療が必要になります。
感情をコントロールできなくなる
感情をコントロールできなくなる子供も多いです。ここでは、怒りや不安などの強い感情に飲み込まれてしまうパターンと、反対に感情を抑制しすぎて自分が何を考えているのかわからなくなるパターンがあります。どちらも親の前で、怒りや悲しみなどのネガティブな感情を出しきれなかったことが原因です。
怒ったり泣いたりすれば親に暴言を吐かれる、暴力を振るわれるという強い恐怖感で感情を抑え込んでも、そのときの気持ちはなくなりません。あとからその気持ちを思い出し、突然怒りや不安に襲われてしまいます。場合によっては周囲に当たり散らしてしまうでしょう。
また、反対に「こんなに辛い思いをするなら」と思い、防衛反応で感情を消してしまうこともあります。すると、嬉しい・楽しいなどのポジティブな感情も見失い、自分が何を感じているのかわからなくなるのです。気持ちを出したくても出せない、わからない状態になり、周囲の人とコミュニケーションが取りにくくなります。
自分は無価値だと思い込む
毒親育ちの子供は、自分は無価値だと思い込む場合もあります。このタイプは、幼少期から「親の言う通りにしないと認めてもらえない、怒られる」という経験を積み重ねています。例えば、テストで100点を取らないと怒られたり、他の子と常に比べられたりするなどです。これにより、親の望む姿になれないと自分には価値がないと思い込みます。
成長してからも、他より何か秀でた部分がないと価値がないと思い、必要以上に他者の評価を気にしたり、周囲の期待に応えようと無理しすぎたりする傾向があるでしょう。一生他者の目を気にし、競争し続けなければならないため、次第に精神的に追い詰められてしまいます。
ありのままの自分に価値を見出せない状態が続くと、次第に存在意義がわからなくなり、希死念慮が強くなる可能性もあります。
他人を信頼できなくなる
毒親に否定的な言葉を浴びせられたり、暴力を振るわれたりした子は人間不信になり、他人を信頼できなくなります。毒親の影響で、「心を開いた途端傷つけられるのではないか」という恐怖心が根付いているからです。誰かに近寄ったら痛い目に遭うと思い、極端に人との関係を避ける場合もあります。
善意で近づいてくる人に対しても「良い人の仮面を被っている」と疑ってかかるため、心を許しきれないでしょう。誰に対しても信頼を寄せられないので、いざという時に助けを求められず、孤独や絶望を感じ続けてしまいます。
大人になったときに毒親になる
毒親に育てられた子供自身も、毒親になる可能性があります。なぜなら、毒になるような子供の愛し方・愛され方しか知らないからです。過干渉や過保護が当たり前だと思い育ってきたのなら、子供にも同じように接してしまいます。暴言を吐かれる、暴力を振るわれるのが通常だったのなら、子供に対して攻撃的になるでしょう。
このように、毒親育ちの子供も同様の子育てをしがちなので、どこかで断ち切らないと負の連鎖が続いてしまいます。本人は毒になる育て方が普通だと思い込んでいるため、悪気はありません。だからこそ改善が難しくなります。
医療機関での治療が必要になる
毒親に育てられた子供は、精神面に異常をきたしやすいです。初期なら自力で改善できる場合もありますが、症状がひどくなれば、医療機関での治療が必要になるでしょう。ここからは毒親の影響で発症しやすい精神疾患を紹介します。
摂食障害
摂食障害とは、食行動に異常をきたす障害のことです。極端に食べ物を拒否したり、食欲コントロールできず食べすぎてしまったりします。毒親に育てられた子供の場合、無意識に「大人になりたくない」と考え成長を回避したり、自尊心の低さから「痩せて美しくなりたい」と願ったりすることが原因で、拒食症になりやすい傾向があります。なお、摂食障害になると、不安障害やうつ病を併発する可能性があるでしょう。
依存症
依存症とは、特定の物や行為に依存してしまい、やめられない状態のことです。依存性が強く、本人が意志をもってやめたいと思っても、自力で治すのは難しいといわれています。依存症には、アルコールや覚せい剤などに依存する状態を物質依存、ギャンブルや買い物、恋愛に依存する状態を行動嗜癖の2種類があります。毒親に育てられた子供は心の安定を求める傾向があるため、上記のような物・行為に依存しやすいでしょう。
愛着障害
愛着障害とは、成長過程で親と適切なコミュニケーションを取れず、心理的な結びつきを作れなかったことが原因で、対人関係に支障をきたす障害のことです。極端に他者を恐れ、関わりを求めない「反応性愛着障害」と、誰に対してもなれなれしく関わりを持とうとする「脱抑制性対人交流障害」の2種類があります。愛着障害はさまざまな要因が複雑に絡み合っていることが多いため、専門機関での治療が必要になります。
心理的外傷後ストレス障害(PTSD)
心理的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、精神に強い衝撃を受けたことがトラウマになり、本人の意思とは関係なく恐怖感に襲われたり、フラッシュバックに苦しんだりすることです。毒親から暴力を振るわれたり、「お前のせいだ」と強く責められたりして、心身が強く傷つけられると発症します。日常的にトラウマとなった出来事を思い出すため、精神的に追い詰められやすいです。次第に「生まれてこなければよかった」という思いが強くなり、希死念慮を持つ可能性があります。
アダルトチルドレン
アダルトチルドレンとは、毒親の影響で何かしらのトラウマを抱いたり、無価値観に苛まれたりして、健全な人間関係を築けず悩んだり、生きづらさを感じたりしている状態を指します。親に十分に愛されなかった恨みや悲しみが原因で、アダルトチルドレンになることが多いです。正確にいうと病気ではありませんが、自力での治療は難しいため、医療機関で薬物療法をしたり、カウンセリングを受けたりする必要があります。
毒親を辞めたい人は何をするべき?やるべきこと6つを解説!
毒親が子供に与える影響は計り知れません。子供のためにも、一刻も早く毒親を抜け出す必要があります。しかし、どのようにすれば毒親から抜け出せるのかわからない方もいるでしょう。ここからは、毒親を抜け出すためにやるべきことを解説します。
精神的な自立を目指す
第一に、精神的な自立を目指すことが大切です。精神的に成熟していれば、子供に依存したり執着したりする必要がなくなります。子供の自立を望み、自分の人生を楽しみたい思いが強くなるでしょう。
しかし、精神が未成熟なままだと、子供の自立を応援できません。心の拠りどころである子供が自分を差し置いて離れていくことを許せず、子供を支配・管理しようとするのです。そのため、毒親を抜け出したいのであれば、精神的な自立は必須だといえます。
精神的な自立を目指すには、趣味を見つけるのが有効です。趣味を見つければ、子供以外のことを考える時間が増えます。また、自分のために何かに取り組み、没頭する時間が増えれば、誰かに依存しなくても人生を楽しめるようになるでしょう。
子供と自分は別の人間だと区別する
子供と自分は別の人間だと区別し、接することも大切です。毒親は、子供と幼少期の自分を重ねる傾向があります。そのため、「自分ができなかったことをやらせたい・やってもらえなかったことをしてあげたい」という気持ちが強いのです。
例えば幼少期、親に構ってもらえなかった親は、必要以上に子供の世話を焼いたり干渉したりします。また、自分が成し遂げられなかった夢がある場合は、それを子供に押し付けてしまうケースもあるでしょう。
しかし、子供と親は違う人間です。「親が望んでいること=子供が望んでいること」ではないため、親の思いや考えを押し付けるのは間違っています。支援者は毒親に「自分と子供は異なる人間だ」と認識させ、子供の意見・考えに耳を傾けるよう促してあげましょう。
子供の欲求を尊重する
毒親を抜け出したいなら、子供の欲求を尊重する姿勢を持つ必要があります。毒親は、子供の欲求に対して否定することが多いです。「親としてちゃんと子育てをしなければ」という思いが強く、周囲の評価を気にする人ほど口出しする傾向が強くなります。つまり、口では「子供のために」と言いながらも、親の体裁や評価のために子供の欲求を通さないことがあるのです。
本人にとっては認めたくない、厳しい事実かもしれませんが、まずは親自身が「自分のために子供をコントロールしようとしている」と自覚することが大切です。そのうえで、子供の欲求を尊重するようシフトしていきましょう。
子供が頼ってくるのを待つ
先回りしてやりたい気持ちを抑えて、子供が頼ってくるのを待ちましょう。子供に失敗してほしくない親心で何でも手伝ってしまう人もいますが、これが当たり前になってしまうと、自分で考え行動できない子に育ってしまいます。生きるうえで失敗は重要な経験の一つと捉え、まずは子供に任せましょう。
子供が頼ってくる前に手を出したがる親は、心配性なことが多いです。心配になりすぎて自分の気持ちを優先し、子供の気持ちを無視してしまいます。子供の力を信じてじっと耐えるのも、親の役目です。子供が成長する機会を奪わないためにも、子供が頼ってきたときだけ手を貸してあげるようにしましょう。
他の子供と比較しない
「あの子はできるのにどうしてできないの?」「〇〇ちゃんよりいい点数だったね」などと、他の子と比較するのはやめましょう。他人と比べた評価を伝えると、子供は誰かや何かと比較した結果でしか自分の価値を測れなくなります。無意識に誰かと比較した話をする親は多いので、上記のような発言をしないよう意識することが大切です。
本来子供は、この世に生まれてきただけで尊い存在です。誰かや何かと比較しなくても価値がある存在だといえます。他と比較するのではなく、子供自身の頑張りや行動を認めてあげること、ありのままの存在を愛していることを伝えていきましょう。
専門機関を受診する
先に紹介した内容を実践しても子供に対する態度が変わらなかったり、気持ちをコントロールできない場合は、専門機関の受診をおすすめします。そもそも毒親になってしまったのは、自分が子供の頃に負った心の傷が原因になっている可能性があるからです。その場合、子供への接し方を変える前に、親自身の心の傷を癒す必要があります。親の心の問題を解決しない限り、毒親から抜け出すのは難しいでしょう。
しかし、心の問題を抱えているかどうかは、自分では気づきにくいものです。自力で改善しようと努力しても変化がない場合はもちろんですが、最初から専門機関の受診を選択し、自身の状況を確認するのも良いでしょう。このように、自分だけで解決しようとせず、第三者の手を借りることも大切です。
まとめ
毒親と呼ばれるほとんどの親は、自分が子供に悪影響をもたらしていると気づいていません。子供がかわいいあまりに世話を焼きすぎたり、干渉しすぎたりしてしまうほか、親自身が幼少期に暴言を吐かれながら育ったために、それが愛情表現だと勘違いしている場合もあります。
しかしそのままにしておくと、自分の意見を言えなくなったり、無価値観に苛まれたりする可能性が高いです。心の傷が深くなると、医療機関での治療が必要になる場合もあるでしょう。
このようなことを避けるには、親が子供のために変わるしかありません。「毒親の影響をなくすには親元を離れるのが良い」との考えもありますが、子供にとって親は自分の世界の全てともいえます。したがって、幼い頃から親元を離れて過ごすのは現実的とはいえないでしょう。
「自分は毒親かもしれない」と気づき、抜け出したい・改善したいという思いがあるのなら、毒親を抜け出すことは可能です。しかし、自分一人では難しい部分もあります。専門機関を受診したり、支援者がサポートしたりして、正しい方向へ導いてあげることが大切です。