成長の過程で、人は失敗を避けて通ることはできません。普段の生活、人間関係、何かにチャレンジした時など、子どもは必ず失敗を経験します。そういった状況に直面し、落ち込み、やる気を失ってしまうこともあるかもしれません。
そのようなときこそ親の出番です。子どもへの接し方、声のかけ方次第で、失敗は子どもの成長のための重要な糧となります。
この記事では、子どもの失敗に対して親がどのように向き合い、どうはたらきかけるべきかについて、考えてみたいと思います。
子どもにとって失敗は大切な経験
まずは、子どもにとって失敗経験がどのような意味を持つか、考察してみましょう。
失敗に対する正しい認識を持てれば、子どもへの良い接し方も見えてくるはずです。
失敗は子どもが自信を抱くきっかけになる
失敗は子どもの成長にとって必要不可欠なものです。失敗することで子どもは、物事が思うようにいかないことを知り、同時に努力することの必要性に気付きます。
失敗に直面して、落ち込んでしまうこともあるでしょう。思い通りいかない状況にかんしゃくを起こしたり、意気消沈してしまったりすることもあるかもしれません。
しかしそれでもあきらめず、挑戦を繰り返し、何かを達成することができれば、それは大きな自信として子どもの心に刻み込まれます。
失敗が子どもに多くの学びを与える
失敗し、落胆し、それでもそこから立ち直るという経験は、子どもにさまざまな学びを与えます。
負の感情の扱い方や、落ち込んだ状況から前向きな気持ちへ切り替える方法も、体感として身に付けられるでしょう。
また、自分が失敗を経験していることで、他人への思いやりや共感の心が育ちます。
他人が困っているときに手を差し伸べ、励まし、理解を深めながら共に生きていくには、他人の痛みを感じ取る心を養う必要があります。
失敗して、辛い思いをしたという経験は、そういった思いやりの心も育むものです。
失敗経験がないと生きる意欲も育たない
もちろん失敗は、望んで直面するものではありません。悔しさや悲しさは、できることなら感じたくないでしょう。それは子どもも大人も変わりません。
しかし失敗経験が乏しいと、そのような感情に陥った際、立ち直る気力を奮い立たせることもできません。失敗から立ち直る能力がない限り、成功の大きな喜びも感じることができないでしょう。
失敗は、生きる意欲を育てるための重要な経験と言えます。悔しい気持ちに向き合い、折り合いをつけ、反省をして新たな希望に変えていく。そのような経験を通して、人は生きる意欲を自ら生み出せるようになります。
親は子どもの失敗に先回りしないことが大切
成長の過程で欠かすことのできない失敗経験。それでは親は、子どもの失敗に対してどのようにはたらきかければよいのでしょうか。
大切なのは、子どもの失敗に対して「先回り」をしないことです。先回りして失敗の機会を詰んでしまうことは、子どもの成長の機会を奪ってしまうことにほかなりません。
親が子どもの失敗をどのように捉えるべきか、詳しく見ていきましょう。
親は子どもの失敗を恐れてしまいがち
現代の社会には、失敗を恐れる風潮があるように感じられます。
親も子どもをどのように育てれば良いのか自信が持てず、学歴やスキル習得など、失敗しない道筋を引くことに躍起になっている姿が見られます。
変化の激しい社会の中では、我が子に失敗させたくないと考えるのは仕方のないことかもしれません。
しかし失敗から学ぶこともたしかにあります。親はそのことを理解し、子どもに「正しく失敗させる」という心構えが必要なのではないでしょうか。
子どもから失敗のチャンスを奪ってはいけない
失敗のない状況を用意してあげれば、子どもも苦しさを感じることはないかもしれません。
しかし、与えられた物事だけこなしていても、子どもの自主性や探求心が育たず、負の感情の扱い方や、立ち直る能力は身につきません。
失敗は子どもの成長にとって欠かせない経験です。その機会を奪うべきではありません。親は子どもが失敗しないように先回りするのではなく、失敗し試行錯誤して、立ち直る姿を、見守る必要があるのです。
まず親がその認識を持つことが、子どもの成長にとってとても大切です。
親が失敗の受け止め方を見せてあげよう
当然ながら、親にも失敗の経験があります。しかも子どもよりも失敗の回数が多く、その分立ち直ってきた経験も多いはずです。
子どもの失敗を見守り、それを良い方向へ導いてあげることも親の役割です。ここでは、親が自身の失敗経験を子育てに活かす方法について考えてみましょう。
まずは子どもの思いを受け止める
失敗を経験すると、子どもは落胆するでしょう。「できない」などと言って、挑戦すること自体をあきらめてしまうかもしれません。
そこで無理に再挑戦や、努力を強要することは適切ではありません。自分の気持ちとは関係なく「やらされている」という気持ちが強くなり、物事への向き合い方も消極的になってしまう恐れがあります。
まずは、子どもの言い分や思いを、否定せずに受け止めてあげることが大切です。悔しさや悲しさを受け止めてもらえることで子どもは、自分で新たな一歩も選択して良いのだと思えるようになります。
失敗の辛さは、希望や意欲の裏返しです。負の感情を受け止める中で、親は子どもの願いを引き出し、それを子ども自身にも理解させてあげると良いでしょう。
そうすることで子どもも再挑戦への意欲を少しずつ取り戻し、失敗を「喜びへいたるための過程」と捉えられるようになるはずです。
失敗は悪いものではないと親が示す
失敗は悪いものではなく、成功にいたるための過程なのだと親が示してあげることも、子どもにとっては大きな励みになります。
「お母さんも小さい頃同じように失敗したことがあるよ」「お父さんも失敗したとき悔しかったけれど、今では良い経験だったと言えるよ」。このような言葉は、子どもに大きな希望を与えるはずです。
親は子どものモデルとも言える存在です。そのモデルが失敗を遠ざけ、失敗経験をひた隠しにしていると、子どもも同様に失敗を恐れるようになります。しかしそれでは、実際に失敗に直面した時、大きな挫折感を感じて、前向きな思いが抱けなくなります。
親自身が失敗した経験があることを示し、「失敗は悪いものではない」と教えることで、子どもも失敗を受け入れられるようになるでしょう。
失敗を受け入れられれば、そこに反省が生まれ、それは新たな挑戦への糧になります。失敗から新たな希望を生み出すためにも、親が自身の失敗経験を子どもに示すことは、とても意味のあることだと言えます。
まず親が失敗への正しい認識を持つことが重要
この記事では、子どもの失敗に対しての親の捉え方や、子どもへのはたらきかけ方について考察してきました。
明確な成功の形や、そこへいたる道筋が見えにくい現代社会では、大人も失敗に対して恐怖心を抱いてしまいがちです。
しかし失敗を肯定的に捉えず、失敗から逃げ続けていては、新たな挑戦も生まれません。探求心も、自主性も、負の感情のコントロールも、失敗を経ない限り子どもは身に付けることができないでしょう。
そうならないために必要なのは、まずは親が失敗を認める気持ちを持つことです。子どもの失敗を先回りして取り除くのではなく、失敗して立ち直るまでを、見届け励ます態度が必要です。
そのためには、親がまず自分の子育て感を客観視し、子どもに何を望むか、どのような成長を遂げてほしいかを自覚する必要があります。
子どもの失敗の機会を奪うのではなく、失敗を見守り、子育てに活かそうとする姿勢が、何より親に求められているのです。