母子分離不安とは?親にできる対処法と考え方

子どもにとって親はかけがえのない存在です。特に乳幼児期の子どもは、親と離れることに大きな不安を感じます。

それ自体は自然なことですが、成長してもその状態が続いたり、学校へ通うことを渋ったりすると、やはり親は心配になるものです。

本記事ではそのような「母子分離不安」について解説します。その原因や対処法を知る過程で、親自身も自分について顧みる機会を得るはずです。

母子分離不安とは?

母子分離不安は、子どもが親と離れた場合に不安を感じることを指します。「母子」とありますが母親だけでなく、親の性別関係なく起こりうるものです。

まずは母子分離不安を感じている子どもの行動や、母子分離不安が表れる時期について見てみましょう。

どのような状態?

母子分離不安を感じている子どもは、親が自分から離れると、泣いたり癇癪を起したりします。抱っこを止めるとぐずるというのも、よく見られる光景です。

親と一緒にいると機嫌よくしているのに、隣の部屋へ親が移動しただけで、泣き叫んだり、親にしがみついたりする乳幼児も多いです。

いつ頃表れる?

母子分離不安は、生後8か月ごろから見られるようになる場合が多いです。もっとも顕著に表れるのは、生後10か月から18か月頃。ハイハイを覚え、行動範囲を広げながら多くの体験を重ねていく時期です。

個人差はありますが、だいたい2歳から3歳の頃までに、泣き叫んだり癇癪を起こしたりする様子は見られなくなります。

3歳頃までは自然な成長過程

母子分離不安は、子どもの成長過程にはよく見られるきわめて自然なものです。

特に3歳頃までは、どの親も子どもが少し離れただけで泣きわめいたり、抱っこを止めるとぐずったりする場面を経験するでしょう。

言うまでもなく子どもが母子分離不安を感じるのは、親が近くにいない状況に不安を感じるからです。しかしその不安も、子どもの学習能力が育てば消えていきます。

一時的に親が目の前から姿を消しても「隣の部屋にいるだけだ」「すぐ戻ってくるから大丈夫だ」と理解できるようになり、泣くことも徐々に減っていきます。

母子分離不安の原因とは?

母子分離不安を感じているとき、子どもはどのような思いを抱えているのでしょうか。それを知れば、親の対処法や考え方が明確になるはずです。

ここでは、母子分離不安が強く表れる子どもの思いと、それが生じる原因について考えます。

心が満たされない

子どもはだれしも親からの愛情を求め、親に甘えます。しかし甘えていても、親から愛情を感じなかったり、心が満たされなかったりすると、母子分離不安は強まっていきます。

両親の仕事が忙しく、甘える時間がない。甘えても、温かい反応が得られない。そのような環境では子どもは安心感を得られず、親の愛情をますます求めるようになります。

「お母さん、お父さんはいつでも自分を愛してくれている」「自分はいつも守られている」と実感できないことが、母子分離不安を長引かせる原因となるのです。

親のそばだけが安全な場所

子どもの生活すべてに親が関わっているような場合も、母子分離不安が強まることがあります。

常に親からの干渉を受けている子どもにとって、安心できる場所は親のそばしかありません。親が自分から離れることは安全が脅かされることを意味し、その結果子どもは大きな不安を感じることとなります。

また、親が子どもの行動に先回りばかりしていると、子どもは自主的に行動したり、考えたりすることが苦手になります。その結果「親と離れても、自分は生きていける」という実感を得られず、親から離れることに大きな不安を感じるようになります。

環境が変わることへの不安

親以外の人との出会いや、小学校への入学など、子どもは成長の過程でさまざまな経験を積んでいきます。

妹や弟が生まれれば、これまで自分を最優先に行動していた両親が、自分にかまってくれない状況に直面します。家庭によってはペットの死、両親の離婚などを経験する場合もあるでしょう。

このような環境の変化は子どもに大きな不安を抱かせます。安心できる場所が減り、恐怖が膨らんだ結果、母子分離不安が顕著に表れることもあります。

母子分離不安への対処法とは?

子どもの母子分離不安の状態が3歳以降も長く続いたり、学校へ通えなくなったりしてしまった場合、親はどのように考え、どういった行動を取ればよいのでしょうか。

ここでは子どもの母子分離不安への対処法について解説します。

子どもと共に過ごし愛情を注ぐ

子どもに母子分離不安が強く表れる場合、まず親が行うべきなのは、とにかく愛情を注いであげることです。子どもに寄り添い、会話し、スキンシップを大切にしましょう。

親離れできない子どもを見ると、親はつい子どもを遠ざけてしまいたくなるものです。独立心を育て、親への依存心を減らすことが解決策と考えがちです。

しかし、子どもの心がそもそも満たされていない場合、必要なのは自立を促すことではなく、親の愛で満たしてあげることです。そうすることで、子どもも「自分は常に愛されている」「親と離れてもその安心感は揺らぐことがない」と実感できるようになります。

過干渉をやめる

子育てにおいて、愛情を注ぐことと過干渉であることは、同じではありません。特に母子分離不安が見られる子どもには、愛情は注ぎつつも、干渉せず見守ることも重要です。

大切なのは子どもの主体性を育てることです。失敗してもかまわないので、子どもが自分から行動していく姿勢を、親はしっかり見届ける必要があります。

親からの愛情を感じつつ、それでも新たな体験を求め自主的に行動していく。失敗と試行錯誤を繰り返しながら、一歩ずつ歩んでいく。そのような過程を経て、子どもの母子分離不安は薄れていきます。

親自身が子育てのあり方を見直す

このように子どもが母子分離不安を感じる背景には、親の接し方や子育ての態度が大きく関係しています。

親が子どもとの適切な距離感を保つことで、子どもの自主性が高まり、結果的に子どもも母子分離不安を感じにくくなるのです。

子育てに愛情が不足したり、逆に過干渉になったりする場合、親の子育てへの考え方に原因があるケースが多いです。

例えば親が子育てに疲れ、子どもに対して冷たい態度を取り続ければ、子どもは安心感を得られず、かえってより強く、愛情を求めるようになります。

また子どもへの愛情が高まるあまり過保護になり、何事も先回りして対応していると、子どもは親に依存するようになるでしょう。

子どもの自主性を高めるためには、まず親自身が自分の子育てを見つめなおす必要があります。そうすることで、子どもとの適切な距離感がつかめるようになり、結果的に母子分離不安も和らげることができます。

子どもの母子分離不安を解決するには親が変わることが大切

この記事では、小さな子どもが抱くことの多い母子分離不安と、その対処法について考察してきました。

子どもが親と離れた際に不安を感じるのは、きわめて自然なことです。また、成長の過程で、子どもの母子分離不安はだんだんと薄らいでいきます。

大切なのは親が近すぎず、遠すぎない、子どもとの適切な距離感を築くことです。そうすることで子どもの自主性が育まれ、健全な成長を促すことができます。

子どもが母子分離不安にとらわれることなく健やかに育っていくために、まず親が自分の子育てのあり方を見直しましょう。