「何事も完全にやらないと気が済まない」「失敗や欠点は許せない」など、完璧主義的な考えを持つ人がいます。
もちろん完璧主義にもメリットはあり、慎重さ、作業品質、周囲への貢献度などが高まる場合がありますが、いっぽうで生きづらさを感じ、なんとか完璧主義を克服したいと考えている人も多いのではないでしょうか。
子育てにおいても、親の完璧主義はさまざまな弊害をもたらす可能性があります。親の完璧主義が子どもの考え方にも反映され、悪影響を与えてしまうことも少なくありません。
本記事では、親の完璧主義が子どもに悪影響を与える理由や、完璧主義を和らげる考え方について解説します。
完璧主義な人は、自分でも気づかないうちにつらい思いを抱えてしまうことがあります。少しでも肩の荷を下ろすために、ぜひ参考にしてください。
完璧主義な親の特徴とは?
まずは完璧主義な親にどのような特徴が見られるか、考察していきましょう。本人が良かれと思って貫いていたスタンスが、子どもに大きなストレスを強いていることもあります。
「自分にはこの傾向があるかも」という親御さんは、ぜひこの機会に一度自分自身の考え方を振り返ってみてはいかがでしょうか。
子どもの失敗や欠点を許容できない
完全主義の人は、周囲へ高いレベルを要求してしまう傾向が見られます。その考えが子どもに向くと、子どもの失敗や欠点を受け止めることが、難しくなってしまうかもしれません。
子どもに対し「〇歳までにはこれができていないといけない」「うちの子どもはこうでなければならない」など、厳しい条件を課してしまうこともあります。
そうなると理想像から外れた子どもの行為や、些細な失敗が許せず、つい必要以上に叱ってしまうことも。
どの親も我が子には立派に育ってほしいと思うものです。しかしその思いが強まりすぎると、かえって子どもが委縮してしまうこともあります。
自分自身にも厳しい
完璧主義的な親は、子どもだけでなく、自分自身にも厳しい傾向が見られます。自分の行動や考え方を厳しく評価し、少しでもうまくいかないことがあると、すべて自分の至らなさと決めつけ、自己嫌悪に陥ってしまうことがあります。
親としての理想が高く、育児のやり方や子どもへのはたらきかけ方などに対し、自己批判的になってしまうことも少なくありません。子どもが何かに失敗したり、言うことを聞かなかったりすると「自分の育て方が間違っているからでは」と、自責の念を感じてしまうことも。
子育てはうまくいかないことの連続です。そのたびに自己嫌悪に陥っていては、子育て自体をつらく感じてしまうでしょう。
感情を抑える傾向がある
完璧主義の傾向が強い人は、自分の素直な感情を押し殺してしまうことがあります。嫌な気持ち、辛い思いなどがあっても、それを表に出したり、誰かに助けを求めたりすることに引け目を感じ、自分一人で抱え込んでしまうことも少なくありません。
親の理想像を思い描き、「弱音を吐いてはいけない」「親は強くなければいけない」など、無理してしまう人もいるでしょう。
しかし子育ては本来一人で行うものではありません。周囲と協働しながら行えばよく、時には誰かに助けを求め、自分の休む時間を確保するのも大切なことです。
そのためには苦しい気持ちを抱えているときに、その思いを自覚し、対処法を冷静に考える姿勢も必要となるでしょう。
親の完璧主義が子どもに与える影響とは?
次に、完璧主義的な子育てが子どもに与える影響について見ていきましょう。
たしかに、完璧主義的な考え方を育児に導入することで、子どもは高い目標を掲げ、結果にこだわる姿勢が養われるかもしれません。あるいは自分の意見ばかり主張せず、周囲への協調性が高まることもあります。
とはいえ、完璧主義な親に育てられた子どもは柔軟性に欠け、自信を失ったり、生きづらさを感じてしまうことも。
育児を行う親は、そのような状況も理解しておく必要があるでしょう。
子どもが大きなストレスを感じる
完璧主義な親はしばしば「毒親」などと呼ばれてしまうこともあります。それだけ、完璧主義が子どもに与えうるストレスは大きなものです。
幼い子どもは自分の興味のおもむくままに活動し、そこに喜びを見出していきます。身体を動かすのが好きな子、じっと何かに没頭するのが得意な子など、それぞれに得手不得手があるのは自然なことです。関心事を探求するうちに、将来の希望を確立していくこともあるでしょう。
そこへ親の完璧主義的な基準を当てはめてしまうと、子どもは探求心を見失う恐れがあります。親の設定した基準をクリアすることばかりに躍起になり、自由な発想を失ってしまうかもしれません。
ただし自身の希望に反して活動していくと、どこかで本心との摩擦が生じます。それがストレスとなって、子どもを苦しめることもあるのです。
子どもの自己肯定感が低くなる
完璧主義的な考え方が重視される家庭では、子どもの自己肯定感が低くなることも懸念されます。自己肯定感とは「ありのままの自分で、十分に認められている安心感」と言いかえても良いでしょう。
しかし完璧主義な親は、しばしば子どもの自己肯定感に一定の条件を与えてしまうことがあります。
「〇〇ができてはじめて一人前」「〇〇ができていない子はうちの子じゃない」。そのような環境で暮らす子どもは、条件がクリアできなかった場合、大きく自己肯定感を損なう可能性があります。
家庭は、「無条件で存在が認められる安全地帯」であるべきではないでしょうか。そのような場所が、完璧主義的な家庭では揺らいでしまう恐れがあります。
周囲の顔色ばかりうかがうようになる
完璧主義な親のもとで育てられる子どもは、常に親の定める基準をクリアすることに必死です。その結果、いかなる場面でも親や周囲の大人の顔色ばかりをうかがうようになります。
大人が定めた基準や、親の期待に応えられない限り、自分は存在価値がないと感じ、ストレスを抱えつつも弱音を吐けず、心をすり減らしてしまうこともあります。
自分の興味ある分野へチャレンジすることに意味が見いだせず、誰かに与えられた合格点ばかりを求めるようになります。それが達成されたときは喜びを感じるものの、成長するにつれ、自身の生き方にむなしさを感じてしまうこともあります。
親と子が完璧主義を和らげる方法とは?
親が完璧主義的な考え方に縛られていると、それが子育てにも表れ、結果的に子どもを縛ってしまうことがあります。そうならないために自分の完璧主義思考を、改善したい親御さんも多いでしょう。
ここでは、そのような親と子が完璧主義を緩和していくためのヒントを紹介します。
親が自分を肯定する機会を得る
完璧主義な親は、自分を肯定できていないことが多いです。さまざまなことがうまくいかない子育ての過程で、問題の原因を自分自身の至らなさと捉えてしまうことも少なくありません。
それを緩和するためには、まず自分に完璧主義的な傾向があることを認め、意識的に自分を肯定する練習をすることです。
休息をもらい、あえて気ままに過ごしてみる。そしてそんな自分を否定せず、無条件で自分は素晴らしいと考えてみる。
そういった機会を設けるうち、凝り固まった考え方が少しずつ柔軟になるかもしれません。
結果ばかりを重要視しない
完璧主義の人は、結果ばかりを重要視し、何かに取り組む過程や思いをないがしろにする傾向が見られます。
子育てであれば、子どもが失敗してしまった事実ばかりに思いが向き、何かにチャレンジしようとした姿勢を否定してしまうこともあります。
しかし大切なのは失敗してしまった結果よりも、次にどう改善するかを考えること。そうすることで結果的に、子どもの向上心が育っていきます。
「結果ばかりを重視しない」。そのような考え方を親が持っていれば、親自身も子育てを通して完璧主義を改善していけるのではないでしょうか。
子どもとの自由な対話の時間を作る
たまには、子どもを指導するばかりでなく、自由な意見を聞いてみてはいかがでしょうか。
「こんな考えはいけない」「勝手な意見は認めない」という思いをいったん排除し、子どもに自由にしゃべらせていると、思いがけない発見が得られることもあります。
「思いもよらないことに興味をひかれていた」「気付かぬうちに自由な発想を奪っていた」。そういった感覚を親が得ることで、親自身が考え方・子育て感を見つめ直せるかもしれません。
また、そのような自由な時間を通して、子どもも「自分は無条件に認められる」という感覚を抱けるようになるでしょう。
専門家の力をかりる
過度な完璧主義は、かえって自分を縛り、生きづらさを感じる原因となるものです。そのためそれを癒し、考え方に変化を加えるべく、専門家の指導を仰ぐことも有効な方法です。
心理カウンセラーや各種コンサルタントなど、完璧主義を癒すための専門機関、アプローチ方法は複数存在します。
なかでもコーチングは、自分の生き方をよりポジティブにとらえられるのに大きな効果をもたらします。「つらい」と感じていた子育てを、より前向きに捉えられるようになるかもしれません。
親は自分の完璧主義に気付き制御することが大切
本記事では子育てにおいて親が抱きがちな完璧主義的思考や、子どもへの影響について考察しました。
「子どもをしっかりと育て上げたい」というのは、親誰しもが抱く思いです。しかしその考えが過剰に強くなり、完璧主義的な子育てを行ってしまうと、かえって子どもの生きづらさを助長する恐れがあります。
大切なのは親が冷静に自分の考え方を見つめること。そして問題があれば、正しく対処することです。
親が自分の完璧主義に気付き、制御することで、子どもがのびのび育つ環境を作り上げることができます。