子育て支援を無理なく継続する3つのポイント

子どものためにも保護者や家庭への子育て支援が必要と感じているあなたへ

そう気づいたあなたは、もしかしたらあなた自身も家庭環境で苦しんできた方でしょうか?
その事実に気が付くまでにたくさん傷つき、苦しみ、戦い、それは今もなお終わらず続いている葛藤なのかもしれません。
それでも「自分と同じ生きづらさを子どもたちに連鎖させたくない」と感じた心優しいあなたは、子どものためには親が変わる必要がある、そのためには親を責めるのではなく親を助けることこそが必要だ、と確信したのでしょう。あなたの過去に、誰か大人の支援があったら、家庭環境は少しは違っていたかもしれない……そのような過去への思いもあるでしょうか。
過去のことは変えられませんが、現在進行形の子どもたちの問題を変えることはできます。

「子育て支援によって親を変える」ことは簡単ではない

「親を支援し一人でも子供が健やかに育ってほしい。子どもにはのびのびと過ごしてほしい」
その夢を叶えるために、あなたはある事に気が付いたでしょう。
「親や家庭を支援するためには子どもが窓口なんだ。それが子育て支援なんだ」
あなたは努力をして何らかの資格を取って、専門職についているかもしれません。
保育士、教員、児童指導員。活躍する場所は様々ですが、子どもに接するということが、親や家庭環境にアプローチするきっかけです。
しかし、人を変えるということは非常に難しいことです。変えようとすればするほど、それを拒み問題はより深刻化していきます。

専門家の知識は実際の親には届かない

様々な専門家も「子どものために親が変わる」ことを唱えています。
「子どもの問題は親の問題を反映している。子供を変えたければ親が変わらなければならない」
「親は子どものお手本になろう」
「親は子どもの強みを見つけて伸ばしなさい」
「親自身の幼少期からの問題を解決しましょう」
など、様々な言葉で親に言及しています。
子育てをしている側からすれば責められているようにも見えるでしょう。だけどそれでは親には響かない、ということは当事者だったあなたならよくわかることでしょう。
だからこそ、苦しむ子どもを増やさないように親を支援する、という方向へ舵を切ることにしたのだと推測します。
残念ながら、専門家のありがたい本の言葉は親には届きません。だけど、子どもや親にとって身近なあなたならば、その言葉を届けることが出来るのです。

当事者の経験を生かすべき?

どうしたらいいのでしょうか?
かつて苦しんだ当事者として、あなたの経験を生かすのがいいでしょうか?
それもいいかもしれません。ですが危険も孕んでいます。それは、あなた自身の親子問題を反映させてしまって、目の前の親子の問題が見えなくなってしまうということです。
「私は親にこうしてほしかった」「私は親をこんな風にサポートしてほしかった」という気持ちが投影されてしまうと、本来取り組むべき親子や、あなた自身をも傷つけかねません。

一般論で接するべき?

では経験を切り離して一般論で語ればよいのか?
それもある意味で正解かもしれません。自分の問題と、誰かの問題を切り離して考えることは重要です。ですが経験者であるあなただからこそ、わかることもあるのです。

支援者にできることとは何だろう? 3つのポイント

それでは結局、どこまで経験を反映させたらいいのか?
そもそも、どうしたら問題を抱えた親や家庭の支援が出来るだろうか?
問題を抱えている家庭ほど閉ざされているものです。

チームアプローチによる多職種連携

この問題は、あなた一人で取り組むことが出来るものではありません。本来はチームで取り組むべき問題です。保育所や学校内の先生たちだけではなく、他の公的機関や福祉機関やインフォーマルなサービスと連携しましょう。そうすることによって、子どもには子どもの、親には親の逃げ場所を用意することが出来ます。親子へのアプローチは別々の、慎重な支援が必要になります。
子どもと親の人生がかかっています。あなた一人では荷が重すぎる問題です。多職種連携が構築されれば、相互に補い合って家庭にアプローチすることができます。上手くいかないときは、チームメイトとしてお互いに励ましあうこともできます。

自分自身のメンタルケアを怠らない

そして最も大事なことは、あなた自身が潰れてしまわないことです。
燃え尽き症候群、自律神経失調症、その他の何らかのメンタルヘルスの不調……それは「誰かのために頑張りたい」という、あなただからこそ陥りやすい罠です。
誰かの幸せのために頑張る人は、しばしば自分自身を顧みないところがあります。頑張っていることに無自覚であったり、頼まれたことを断れなかったり、自分でもわからないうちに限界を迎えます。
そうならないようにチームアプローチで取り組むことや、スーパービジョンを受けることが大切です。
一人でできることとしては、ストレス発散方法があればいいですよね。カラオケで歌う、スポーツをして汗をかく、大自然を満喫する。あなたのストレス発散方法があれば積極的に行ってください。
でも、どうやっても考え事が頭から離れないときがあります。
そのような時はどうしましょうか?

カウンセリングの活用

そのような時はカウンセリングを活用しましょう。
「カウンセリングって精神科でしょ? 病気になった人が行くんでしょ?」
と思わないでください。カウンセリングは病気の有無にかかわらず、誰でも利用できる場所です。必ずしも病院に併設されているわけではありません。お住まいの近くにあるかもしれませんし、昨今ではオンラインサービスも充実しています。
カウンセリングとは、悩みの大小にかかわらず何でも聞いてくれます。「心理的に守られた安全な場所で、どのような話も聞きますよ」という場所です。
「聞いてもらうだけでしょ?」
聞いてもらうだけで、ストレスは軽減されます。しかも「聞くこと」のプロです。家族や友人とは異なる存在だからこそ、どんな感情も吐き出していいのです。
カウンセラーに「否定せずに聞いてもらえた」「肯定してくれた」「あるがままを受け入れてくれた」という経験は、あなたの新たなエネルギーとなります。今後、何か嫌なことがあっても「カウンセラーに聞いてもらうんだ」という後ろ盾が出来ます。
あるいは、カウンセラーに話すうちに、自分の中で新たな気づきが生まれることもあります。自分の経験と知識と環境から、どのように親や家庭への支援が出来るかという発見が生まれるかもしれません。

子どものための子育て支援は継続可能でなければならない

人はすぐには変わりません。我が子を追い詰めるほどの親や家庭環境であれば、なおさら問題は複雑です。きっと、かつて当事者だったあなたにはよくわかるでしょう。ちょっとやそっとの声掛けや親切だけでは状況はひっくり返せません。
だからこそ継続的に、多方面からのアプローチが必要になります。子どもには子どもへ、親には親へのケア。精神面、経済面、住居、就労問題、人間関係、病気や障害、それぞれの専門家が必要となります。
「子どものためにも親や家庭を支援したい、自分が苦しんだからこそ誰かの役に立ちたい」
そう願って行動を始めたあなただからこそ、あなた自身を大切にしてください。あなたもまた誰かに頼りながら、ストレスを適切に吐き出しながら、あなたの支援活動が継続可能なものであることを願っています。

参考:
『気づけない毒親』電子発行版:2019年6月24日、著者:高橋リエ、発行所:毎日新聞社
『回避性愛着障害 絆が希薄な人たち』電子書籍版発行:2014年1月10日、著者:岡田尊司、発行所:株式会社光文社
『カウンセリングについて|困ったときの相談先 – 厚生労働省』
『「チーム」と複眼的思考 ― チームアプローチ力とは何かについて考えるために―』
『悩みを抱える子育て家庭に寄り添い支援できるのは、保育現場だった!?保育ソーシャルワークを全国へ?』