学校に何らかの理由で、通えなくなってしまった子どもたちの居場所として「フリースクール」と呼ばれる場所があります。今、日本では500か所近いフリースクールが運営されており、4000人以上の小中学生が通っています。
しかし、現在フリースクールへ通う子どもの数は、不登校児童のうち2%ほどしかいないのが現状です。そこには金銭面の負担、心理面の問題、まだまだ解決すべき課題がたくさんあります。
そもそも、フリースクールではどのような活動が行われているのか知っていますか。
社会的にまだまだ知られていないというのが、現実ではないでしょうか。
フリースクールはあくまでも「不登校の子が通う学校」というほどにしか認知されていないかもしれません。
しかしそれでは不十分です。
不登校は特別なことではありません。
環境や境遇、子どもの性質によっては、どの子どもでも不登校になる可能性があるのです。国もそれを認め、そしてフリースクールが重要な役割を担うことも明言しています。
この記事ではフリースクールでの活動を、それぞれの種類ごとに解説していきます。
フリースクールがどういう場所で、どんな活動を行っているのか。多くの人がそれを知ることで、不登校の子どもたちももっと生きやすい社会になるのではないでしょうか。
フリースクールとは
まずフリースクールの概要について説明します。フリースクールは通常の学校以上に、多彩なカリキュラムを用意しています。
フリースクールは民間の教育機関
フリースクールは国の教育機関ではありません。運営は主に民間によって行われ、卒業資格もフリースクールのみで取得することはできません。
小中学生の「籍」は通常の学校にあります。フリースクールでの活動が出席扱いになることもありますが、それを決定するのは学校側です。
一口にフリースクールと言っても、その種類や活動はさまざまです。学習指導要領のようなカリキュラムの縛りもありません。そのため、それぞれの学校が方針を掲げ、活動を行っています。
それぞれ子どもに合ったフリースクールを
不登校の子どもたちも当然一様ではありません。さまざまな性格や興味関心があり、得意不得意があり、学校や学習に関する考え方も違います。
そのためフリースクールにはいくつかの種類があります。
子どもをフリースクールに通わせたいと考える保護者の方も、まずどのような種類のスクールがあるかを理解し、子どもの思いを受け止めながら、子どもに合ったフリースクールを選択する必要があります。
フリースクールの種類
ここでは、フリースクールの種類を解説します。今回は、子どもの「目指すもの」で分けて解説していきます。
復学・進学を目指すフリースクール
学校への復帰や、進学を目指したフリースクールがあります。
このようなフリースクールの目標は復学・進学と明確なので、保護者も子どもも職員も、指針が共通です。
勉強自体は苦手ではない子どもや、子どもも復学・進学の希望がある場合は、フリースクールに通うこと自体が張り合いにもなってきます。
生活リズムを正す
こういったフリースクールは、生活リズムの改善などにも努めます。
不登校児の中には、生活リズムが崩れ、昼夜逆転してしまう子どももいます。しかし、その生活を続けていては、学校への復帰は難しいため、それを規則正しいものに修正していくのです。
学習面での指導
授業についていけず、学校自体が嫌になってしまう子どもたちもいます。また、成績不振は自己肯定感の低下にもつながり、ひいては周囲との人間関係にも影響をもたらすこともあります。
復学・進学を目指すフリースクールでは子どもたちの学力に合わせ、つまずいてしまったところまで戻って勉強することができます。中学生でも小学校の勉強からやり直すことも当然あります。
本人が少しずつでも自信を取り戻すきっかけにもなります。学年などには縛られず、周囲とも比べず、自分のペースで学べるのが利点です。
進学・進路指導
また、その子の将来の夢や希望の進学先を見越して、進路指導も行なわれます。
今の地点からその子に合った学習プランを作成できるので、より現実的に目標を見据え、学んでいくことができます。本人のやる気を取り戻すことにもつながります。
周囲への適応力も高める
学校に戻ると、友だちや先生らとの人間関係が生じてきます。これが苦手で不登校になってしまった子も多いと思います。
その適応力についてもフリースクールでは、グループ活動などを通して養っていきます。
個別指導を行うフリースクールもある
個別で学習や指導を行うフリースクールもあります。
集団での活動に苦手意識を感じていたり、まだ人と接することに不安があったりする子どもを対象に、その子に合った指導を個別で行っていきます。
子どもに復学や進学への意志があれば、まずは個別指導から、人間関係の苦手克服や、その子に合ったカリキュラムでの学習で、目標達成を目指します。
自由に学ぶフリースクール
もっとも数の多いタイプのフリースクールです。
子どもの自由意志に任せて活動を行います。通学時間や学習内容も縛りを設けず、子どもが無理なく参加できる体制を備えています。
関心のある分野で意欲を高める
目指すものは学校の復学や進学とは限りません。
それぞれの子どものペースに合わせ、関心ある分野を通して意欲を高め、視野を広げていくことが狙いです。
やがて明確な目標が定まってきたら、そのための支援も行います。
課外活動を行うフリースクールも
レジャー活動や遠足、運動会のような課外活動をメインで行うフリースクールもあります。
このタイプのフリースクールも復学や進学を直接的な目的とするのではなく、まずは活動を通して、意欲を高めていくことを目指します。
自然と苦手を克服できることもある
自分の関心のあることに取り組んだり、目の前の課外活動に熱中するうちに、自然と周囲とのコミュニケーション力が高まり、苦手意識を克服できることがあります。
そうして成長した先で、今後の進路を考えていくこともできます。
似た境遇の仲間と学べる
周囲にいる子どもは、学校のクラスのように同じ年齢の子ばかりではありません。さまざまな人たちと交流することになります。
ただし、ともに活動する仲間は、自分と境遇が似ている子が多いので、学校よりも構えずに接することができるかもしれません。
それが子どもの気持ちを楽にする場合もあります。
専門的な支援を行うフリースクール
メンタル疾患など、心理面での不調を抱える子どもに向けたフリースクールもあります。
臨床心理士やスクールカウンセラーなどが、専門家としての目線で子どもや保護者と接します。カウンセリングにも重きを置いています。
専門的な支援体制を整えている
子どもの心身が安定しない場合は、専門家の支援が不可欠ですが、このタイプのフリースクールは医療機関とも連携しながら、子どもたちの支援を行います。
接し方に配慮が必要な子どもたちへ、専門のスタッフが対応するので、保護者も安心して通わせることができます。
自宅訪問を行うフリースクール
自宅を出るのが難しい子どもに対して、スタッフが家へ訪問するタイプのフリースクールもあります。
ひきこもり傾向の子どもへ、専門家が1対1での交流を行っていきます。家族だけではどうにもならない状況を解きほぐしていき、動き出すための支援を行います。
保護者との対話も重視
保護者の方と協働するだけでなく、保護者へのカウンセリングなどを実施する場合もあります。
不登校やひきこもりは家族全体の問題となりがちですが、専門家が子どもだけでなく保護者にも支援を行います。
不登校児童の中には専門家による特別な支援が必要な場合もあります。その場合はこういったタイプのフリースクールがサポートを行います。
フリースクールは子どもに寄り添って考える
本記事ではフリースクールの活動を種類に分けて紹介してきました。
子どもたちには個性があります。当然不登校の子どもたちも、学校への気持ち、将来の希望、好きなこと・苦手なこと、メンタルの状態等々、それぞれ「心」を持っています。
フリースクールはそういった個性を尊重し、それぞれの子どもたちに合った支援を行っていく教育機関です。単に「不登校の子どもが行く学校」とひとくくりに認識するべきではありません。
フリースクールを利用することへのためらいに、「フリースクールに行くことは不登校と認めることになる」というマイナスイメージがあります。しかしそうではなく、子どもの個性を尊重する場としての理解が広まれば、フリースクールへのイメージもより良いものになるでしょう。
多くの人がフリースクールの「姿」を理解し、不登校の子どもたちも生き生きと成長してゆける社会へ、つながることを願います。