子育てにおいて、子どもの強みを伸ばすことが重要視されています。
子育ては一見すると、「子どもをしっかりとしつけなきゃいけない」「世間に迷惑をかけないように弱点を正さなければいけない」と捉えられがちです。
もちろん、子どものわがままな態度や、好き勝手な振る舞いは正す必要があるでしょう。しかし、強みを伸ばすことはそれを許容するものではなく、むしろ他者への思いやりなど、健全な成長を促すものです。
本記事では子どもの強みを伸ばすことの大切さや、強みを見つける方法について考察していきます。
子どもの強みを伸ばすことの大切さとは
まずは強みを伸ばすことが、子どもたちにどのような成長をもたらすのか、考えてみましょう。
子どもの強みを伸ばすことは、生きる過程でさまざまな良い効果をもたらします。
物事に意欲的に取り組めるようになる
強みを伸ばすことで、子どもの物事への取り組み方がより意欲的になります。
強みを伸ばすということは、子どもが自らの強みを認識することでもあります。その結果、子どもは自信を持ち、あらゆる物事を肯定的に捉えられるようになります。
未知の事柄への挑戦や、はじめて会う人との交流など、新たな世界へ一歩踏み出すための勇気が、強みを引き出すことで身についていくのです。
自分の強みや弱みを知ることは、「自分らしさ」を知ることです。「自分らしさ」を大事にすることは、自己肯定感を育て、自分らしい幸せをつかむ心を養います。
課題への向き合い方が身につく
子どもは成長の過程で、多くの問題・課題と直面することになります。その際も、自分の強みを理解し、自信を備えていれば、課題への向き合い方も自ら見つけていけるようになるでしょう。
課題の解決策はひとつではありません。適応しなければいけないこと、対策を捻り出し乗り越えなければいけないこと、上手にスルーするべきことなど、さまざまな「答え」の形があります。
重要なのは、都度状況を把握し、どのように対処したらよいのか、どのような解決策が最善なのか、自分自身で答えを出していくことです。自分の強みを理解し、自信を持っている子どもは、そのような課題に立ち向かう能力も高めていけるでしょう。
他者への思いやりが育つ
強みを伸ばすことは、自分勝手な子どもを育てることではけっしてありません。むしろ他者への思いやりの気持ちも、強みを伸ばすことで養われていきます。
自分の強みに自信を持つことは、自分らしさを理解することでもあります。そして自分らしさを大切にしている子どもは、「他人の自分らしさ」も尊重できるようになります。
強みを伸ばすことは、他者を出し抜くのではなく、むしろ自分も他者も尊重できるようになること。それをまず、大人が理解しておく必要があるでしょう。
幸福度が上がりストレスも減少する
親に強みを見出された子どもたちは、幸福度が上がりストレスも減少することが報告されています。
ネガティブな出来事があったとしても、その捉え方は人によって異なります。自信を身に付けている子どもは、難しい局面でもなんらかの対処法を見出すことができるでしょう。
そのような態度が、結果的に幸福度を上げ、ストレス耐性を高めていきます。
子どもの強みを引き出すことは、生きるうえで必要な「生きる力」を育むものだと言えるのです。
子どもの強みを見つけるための視点
子どもの個性が顕著に表れはじめるのは、おおよそ2歳〜3歳だと言われています。どの子どもにも個性があり、性格、身体的能力、興味・関心事もそれぞれ異なるでしょう。
なかには、自分の子どもの弱点ばかりが目に付いて、強みなど見出せないと思う親がいるかもしれません。
しかし、子どもは誰もが強みを持っています。ここでは子どもの強みを見出すために注目すべき視点について解説します。
才能・素質
強みと聞いてもっともわかりやすいのが、子どもの才能や素質でしょう。
なにかに対して飛びぬけた能力を発揮する。一つの分野の技術習得が周囲と比べてもぐんと早い。そのような姿があれば、親はその強みを引き出してあげると良いでしょう。
子ども本人は何気なくやっていることでも、親が強みとして見出してあげることで、子どもも自信を持って取り組めるようになるはずです。
性格
歴然とした才能や素質は、そう簡単に見つかるものではありません。しかし、性格はどうでしょうか。子どもの周囲への振る舞い、物事の取り組み方に、魅力的な部分が見いだせないでしょうか。
「いつも新しいことに積極的に取り組む」
「友だちを手助けし、思いやりのある言葉をかけられる」
「何かを始めたら長時間没頭して、高い集中力を維持する」
「何かに取り組む前に慎重に安全かどうかを確認する」
そのような行動のあり様に、それぞれの子の強みが見いだせるかもしれません。
親がそれを認めて伸ばしてあげることで、子どもはその性格を「自分らしさ」として肯定的に考えられるようになります。
身体能力
身体能力も、子どもの強みを見出す大きなきっかけになります。「足が速い」「力持ち」といったものはもちろん「手先が器用」「瞬発力がある」「観察力が高い」といった性質も立派な強みです。
なにも群を抜いた能力である必要はありません。何らかの身体的能力を強みとして自覚させてあげることで、それを生かした新たなスキルを習得していくかもしれません。
このように子どもの強みは、その子の振る舞い、考え方、身体的特徴など、さまざまな側面から見出すことができます。
子どもの強みの見つけ方4つ
子どもは誰もが強みを持っていて、そしてさまざまな場面でその強みを発揮します。重要なのは親が子どもの行動から強みを見つけ出し、大切にしてあげることです。
ここでは、子どもの強みを見つけるための具体的な方法を4つ紹介します。
1、興味・関心事を見つけてあげる
子どもは、自分の興味のおもむくままに行動します。自由時間でもその行動はさまざま。外を走り回る子もいれば、屋内で絵に没頭する子もいます。じっと虫を観察している子や、大人と話したがる子もいます。
そのような興味・関心事は、子ども本人は強みなどと思っていません。しかし親がそれに注目し、「きみは運動が得意なんだね」「きみは絵が好きなんだね」などと引き出してあげることで、より積極的に取り組めるようになるかもしれません。
もちろんその内容は成長の過程で変わっていくかもしれません。しかし自分の得意なことを意識し、一生懸命取り組んでいくという意欲と自信は、どのような分野でも活かせる大切な能力です。
2、周囲とのかかわり方に良い点を見つける
家庭での時間や、幼稚園・学校での生活を通し、子どもは他人と関わりながら育っていきます。その様子を観察することで、子どもの強みが見えてくることがあります。
「誰とでも分け隔てなく会話ができる」
「相手が喜ぶことを積極的に探す」
「友だちがケガをしたらとても心配する」
「周りへ何かを教えるのが得意」
さまざまな特徴が見いだせるはずです。そこから親が良い面を見つけ出し、「あなたはそこが優れているね」と背中を押してあげることで、子どもはその良さを、さらに伸ばしていけるようになるでしょう。
3、身に付けた能力を評価してあげる
才能や素質ばかりでなく、何かに取り組んで身に付けた能力やスキルも、その子どもの強みと言えます。
勉強、スポーツ、芸術、どのような分野であっても、身についた能力は強みです。
テストの点や勝ち負けばかりで子どもを評価するのは適切ではないかもしれません。しかし、テストのために勉強して、良い結果を獲得したのであれば、身についた知識は強みです。仮にテストの点が芳しくなくても、頑張ろうとした努力できる姿勢は紛れもない強みでしょう。
生まれつき持ち合わせた強みだけでなく、後天的に会得した能力も強みであることを子どもに伝えれば、子どもは努力する姿勢を育んでいけるかもしれません。
4、他人の声も参考にする
子どもの強みは、いつも一緒にいる親からは見えにくい場合があります。そんなとき、他の子の親や先生など、他人の評価に耳を傾けることも有効です。
「〇〇ちゃんは誰とでも仲良くなれてすごいね」
「〇〇くんは虫取りがだいすきなんだね」
ふだん家庭では「当たり前」だと思っていたことが、他人が見ると長所のように見えることがあります。それは紛れもなく、その子どもの強みでしょう。
大いに評価し、伸ばしてあげれば、そこからぐんぐん成長していけるかもしれません。
子どもはみんな強みを持っている
本記事では子どもの強みを伸ばすことの重要性や、強みを見つける方法などについて解説してきました。
「うちの子どもは弱点が多くて、強みなんて見つけられそうにない」。そのように言う親がいるかもしれません。
しかしその弱みと思われる点が、強みのヒントになることもあります。
物事への取り組みが遅い子は、興味のある事柄への探求心が深いのかもしれません。友だちについ手が出てしまう子どもは、そのエネルギーをより良いことに向けられることもあります。
子どもはみんな強みを持っています。その視点から、親が良さを見出し、伸ばしてあげる姿勢が大切です。