みなさん、こんにちは。みなさんは「存在承認」という言葉を聞いたことがありますか?
子どもは「存在承認」されることによって、やる気やモチベーション、さらには自己肯定感が上がります。「存在承認」はちょっとしたことを意識するだけで大きく変わります。
この記事では、「存在承認」の定義、そして「存在承認」をするために日頃から心がけるべきことについてご紹介します。
「存在承認」って何?
下記の図をご覧ください。実は「承認」には3種類の承認があり、相手の「何を」認めるかによって異なります。
それぞれの「承認」について簡単に説明します。
① 結果承認
結果承認とは、相手が行ったことに対する「結果や成果」を褒めて認めてあげることを指します。
結果承認の例としては下記の通りです。
「今回の英語のテスト100点だったよ、すごいじゃん!」
「この間の県大会でベスト4だったんだって?おめでとう。」
「この間の美術の絵、表彰されるって聞いたよ!」
相手の努力や成果を労う言葉かけだけでなく、報酬や表彰といった目に見える形で結果承認することで、相手は自信を持ちます。
② 行動承認
行動承認とは、相手が行った「行為や行動」そのものを褒めたり、認めることを指します。
世の中全体を見ると、その人が行った行為や行動ではなく、結果だけを取り上げて褒めることが非常に多いです。しかし、結果や成果を生み出すためには、行動が必ず必要になってきます。
結果の成否に関係なく、その「行動や行為」を褒めることで、相手はモチベーションを維持することができるでしょう。
下記が行動承認の例です。
「いつも、ゴミ捨てに行ってくれてありがとう。」
「毎日勉強していてえらいね!」
「手伝ってくれてありがとう。」
③ 存在承認
「存在承認」が全ての「承認」のベースになる部分です。「存在承認」とはその名の通り、「相手の存在を認めてあげること」です。
存在承認があることで、相手は「自分はここにいていいんだな」「ここが私の居場所だ」「他の人に自分の存在が認められた」と感じることができます。
下記が存在承認の例です。
「◯◯ちゃんはクラスのムードーメーカーでいてくれてるから助かるよ」
「◯◯さんがいると安心だね」
「◯◯君といると、いつも元気がもらえるよ。」
存在承認がないと、結果承認や行動承認があったとしても、白々しいと感じてしまい、中々上手く人間関係を築けません。
よって、まずは相手と良好な関係を築いていくためには、この「存在承認」が必要不可欠なのです。
「存在承認」の方法について
前章で、「存在承認」とは「あなたがいてくれて嬉しい」というメッセージを発して、相手に安心感を与え、居心地をよくしてもらうことであることを説明しました。
それでは、どのようにして「存在承認」を行えば良いのでしょうか?
この章では存在承認を行うための方法をご紹介します。
笑顔で名前を呼ぶ
「おはよう」「ありがとう」、このような挨拶をするときに相手の名前を入れてみてください。
「◯◯ちゃん、おはよう」「××君、ありがとう」。このような挨拶に変えることで、ほんの小さな変化ではありますが、相手は「この人は自分に話しかけている」「自分を認めてくれている」と感じ、存在承認を感じることにつながるのです。
私は教員になる前の教育実習の時から、生徒の名前を早く覚えようと心がけていました。
家庭と違って、クラスだと、1対1の関係ではなく、教師1人に対してクラス全体となりがちで、中々生徒一人ひとりと個々で関わる場面が限られてきます。
しかし、私は名前を覚え、少しでも早く顔と一致させるように努力しました。そして、朝、廊下に立ちながら、登校する生徒たちに、「◯◯さん、おはよう」「◯◯君、今日元気そうだね。何かいいことあったの?」「◯◯、あと1分でチャイム鳴っちゃうから急ぎなさいよ」。そんな声かけをしていました。
特に教育実習を始めて間もない頃や、新学期が始まったばかり4月頃は、生徒に「先生、もう名前を覚えてくれたの?」とよく驚かれたものです。
そんな生徒たち全員に共通することは、みんな名前を呼ばれて嬉しそうだったということです。みなさんも分かるのではないでしょうか?特に、学校のような集団の中で、名前を呼ばれると、「自分を認識してもらえている」「自分を個人として扱ってもらえている」と感じることができるのではないでしょうか?
そして、「笑顔で」というのがポイントです。笑顔で挨拶をすることで、あなた自身の印象も良くなり、相手もあなたに心を開きやすくなるでしょう。
生徒と良好な人間関係を気づく上でおすすめのテクニックの一つです。
強みや能力を認めてあげる
「この間のテスト、前回より30点上がったね。」
「宿題頑張ったね。」
「◯◯さんの字、キレイで読みやすいね。」
このような何気ない一言で、子どもは「この人は私(僕)を見てくれている」と安心し、嬉しいと感じるのです。
また、場合によっては、子ども自身がまだ気づけていない長所や強みであったりします。その場合は、さらに、子どもに自信をつけさせ、自己肯定感を高めることにつながるでしょう
そして、短所と長所は表裏一体であるということを覚えてもらいたいと思います。
教員だった時に、生徒たちの調査書を書きました。各生徒たちの強みやアピールポイントを書くことになるのですが、残念ながら、良いところを中々見つけられない子、悪いことばかりして、良い点が思い当たらない子がいるものです。不安に感じて、周りの同僚や先輩の先生方に聞いても、そういうことはあるということだったので、「あるある」なんだと思います。しかし、短所と長所は表裏一体です。モノは言いようとはまさにこのことです。
例えば、ワガママな子は「自分の意志をしっかりと持ち、貫こうとする」、少し変わっている子は「物事を多角的に見ることができる」といった具合です。
短所を改善することも大切ですが、時と場合によっては、それが強みになることもありえます。
そのようなネガティブな特徴をポジティブな表現に言い換えて、子どもたちに伝えられると良いでしょう。
子どもの変化に気づく
「髪切った?」
「なんか今日体調悪そうだけど大丈夫?」
このような言葉も「存在承認」へと繋がります。
あなたご自身も週末に髪を切って、翌週職場に行ったら、「髪切った?」と聞かれて、嬉しい気持ちになったことはありませんか?逆に、気づいてもらえなかった時は、少し凹んだりしませんか?
それと全く同じです。自分の変化に気づいてもらうことで、「自分のことを気にかけてもらえているんだ」「自分は見てもらえているんだ」という気持ちになるのです。
しかし、「変化」に気づく上で、少し注意するべきことがあります。「変化」というのは、大抵時間がかかるものです。つまり、「変化に気づける」ということは、相手との関係もそれなりに続き、人間関係も構築出来上がっていることが多いです。
一般的に、人は相手の存在が当たり前になるほど、相手の存在を承認することが疎かになりがちです。既に人間関係が出来上がっている人であっても、相手の存在に対するリスペクトや観察は忘れないようにしましょう。
「褒める」よりもまずは「存在承認」で人間関係の土壌を作り上げよう
いかがでしたか?今回の記事では下記のことについてご紹介しました。
- 3種類の「承認」とその定義
- 「存在承認」のやり方
近年、「褒める」教育がもてはやされていますが、「褒める」前に、相手と人間関係のベースを築き上げてからでないと、それは効果を発揮しません。
「存在承認」は、名前を呼びかけながら挨拶をする、笑顔で話しかけるなど、誰でも簡単に実践できるものが多いです。
相手や子供たちにとって、居心地の良い環境づくりに「存在承認」は必要不可欠になってくるので、日頃から心がけるようにしましょう。